太陽誘電、高収益ビジネスモデルへの変革により成長を目指す
2020年9月21日 06:53
太陽誘電は9月14日、群馬県で河川監視システムの実証実験を開始すると発表した。地方自治体および群馬大学と協力して、水位計や冠水センサー、カメラのデータをクラウドシステムで伝送し、PCやスマートフォンで確認する。各地で豪雨災害が頻発する中、河川の状況を監視して住民の安全につながるきめ細かな河川監視の実現を目指していく。
太陽誘電は1950年、佐藤彦八によって東京都で創業され、チタン酸バリウム磁器コンデンサを商品化。1970年に東証2部に上場し、1973年、第1部に指定された。電子部品の単一セグメントの会社として発展し、通信機器をはじめ幅広い分野に部品を提供し、世界の電子化に貢献してきた。
2020年3月期の売上高は2,823億円。用途別の構成比は、通信機器分野が35%、情報インフラ・産業機器分野が23%、自動車分野が18%、情報機器分野が14%、民生機器分野が10%を占めている。
各分野に使われる電子部品別の構成比は、コンデンサが62%、複合デバイスが18%、フェライト及び応用製品が14%、その他が6%を占めている太陽誘電の動きを見ていこう。
■前期(2020年3月期)実績と今期見通し
前期売上高は2,823億円(前年比2.9%増)、営業利益は前年よりも19億円増加の372億円(同5.5%増)といずれも過去最高を更新した。
営業利益増加の要因としては、操業度の向上により107億円、原価低減により24億円の増益であった。一方、販売価格の低下で65億円、固定費の増加で37億円、海外比率91%の中、前年よりも円高(1ドル110.5円->109.1円)により9億円の減益であった。
今第1四半期(4-6月)実績は、売上高605億円(前年同期比11.9%減)、営業利益79億円(同16.7%減)の中、今期は売上高2,650億円(前年比6.1%減)、営業利益270億円(同27.4%減)を見込んでいる。
■中期経営計画(2018年3月期~2021年3月期)による推進戦略
高収益体質に向けたビジネスモデルの変革により、信頼されるエクセレントカンパニーを目指して、次の成長戦略を推進する。
1. 成長する自動車、情報インフラ・産業機器分野への取り組み強化。
2. コンデンサ、インダクタ、通信デバイスのコア技術強化と回路モジュールなど新事業創出。
3.材料技術、積層技術を組み合わせ、5G時代を支える積層セラミックコンデンサ、積層セラミックフィルタなど高性能電子部品の供給拡大。
4.2019年に完全子会社化した自動車向けアルミ電解コンデンサ製造のエルナー社を中心に、EV向け大型電力コンデンサの量産化、全個体電池の開発。
5.AI、IOTを活用したモノづくりの進化。
需要変動の大きいスマートフォンなど通信機器への依存度を下げ、自動車、情報インフラ・産業機器向けのウエイトを増やし、高性能化を進めるビジネスモデル変革で成長を目指す太陽誘電の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)