節税ありきの不動産投資には要注意

2020年9月17日 07:24

■節税ありきの投資は本来の目的から逸脱

 不動産投資を始めるきっかけに資産形成を挙げる人は多い。昨今は老後2,000万円問題や人生100年時代といった話題もあり、退職後のセカンドライフを充実させたいという考えもあるだろう。

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 また中には、不動産投資で節税をしたいと考えている人もいるかもしれない。しかし、節税するためには赤字を計上する必要があるため、資産形成を目的とした不動産投資の趣旨から大きくかけ離れてしまう。

 余程の高所得者であるか、明確な運用プランがある場合を除いて、初心者は節税を目的とした不動産投資を避けるべきだろう。

■不動産投資における節税スキーム

 そもそも不動産投資で節税可能な理由は、他の黒字所得と損益通算が出来るからだ。損益通算とは損失と利益を相殺することで、不動産投資では、給与所得(黒字)と不動産所得(赤字)を相殺する場合が多い。

 不動産投資で経費が発生するのはご存知だろう。不動産取得税や登録免許税、固都税などの各種税金をはじめ、減価償却費、管理費、ローンの利息、火災・地震保険料など様々だ。

 これらの経費が収入よりも大きくなれば、不動産所得を赤字として計上出来、所得税の還付や住民税の軽減を受けられる。これがいわゆる不動産投資における節税スキームの正体だ。

■最も大きく節税出来るのは初年度

 不動産投資では原則、購入初年度に最も大きく節税が出来る。これは初年度に不動産の取得に要した経費を計上出来るためだ。

 しかし、次年度以降は計上可能な経費が減少するため、節税効果は初年度と比較すると薄れてしまう。初年度の計上のみで、不動産投資は大きく節税が出来ると勘違いしないようにしたい。

■減価償却の限界

 不動産投資における主要な経費の1つに減価償却が挙げられる。

 減価償却とは固定資産を耐用年数に応じ、毎年一定額(定額法の場合)計上する経費のことだ。

 不動産においては、建物と設備を減価償却することが出来る。高額な資産という性質上、毎年多額の経費を計上出来ることから、節税において非常に重要な経費となっていることは間違いない。

 先述の通り、償却可能な期間(耐用年数)は予め決められている。建物においては、木造22年、重量鉄骨34年、RCは47年で、設備においては15年だ。

 しかし新築の区分マンションにおいては、償却期間が長いため、1年に計上可能な経費は少ない傾向がある。また、設備は償却期間が短いため、長期間の節税には向かない資産といえるだろう。

■節税はあくまでプラスα

 不動産投資における節税は、本来の目的である資産形成に付帯するプラスαの要素と捉えるべきだ。

 それは初年度に大きく節税出来たとしても、次年度以降も継続することは不可能だからである。

 先述の通り、不動産投資は資産形成が目的とする場合が多い。つまり、赤字を出し続ける不動産経営は本来の目的から逸脱しており、賢明ではないといえる。(記事:大掛翔太・記事一覧を見る

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