景気の牽引役、工作機械の下降傾向続く 外需減少に加え、内需で大きな落ち込み

2020年9月16日 08:20

 政府は既に7月、景気動向指標研究会を開催し2018年10月に景気の拡大は終了し、以後景気後退局面に入ったことを認めている。景気動向を示す先行指数として工作機械受注額があるが、その動向を見ると18年の第3四半期には外需の前年同月比は0を下回り、年後半の第4四半期には内需も前年同月比はマイナスへと転じている。18年は米中貿易摩擦が激化した年で、その長期化が懸念され先行き不透明感が高まり、中国経済の減速と世界的な経済の失速があった年だ。

 それまで日本経済は中国向け半導体製造装置などを牽引役として好調な輸出に支えられていたが、米中摩擦による中国経済、世界経済の減速で半導体製造装置や工作機械などの生産用機械の輸出も大きく落ち込んでいる。これに対して内需である消費は堅調に推移し続け、政府も「緩やかな回復」との判断を続けていたが、総合的判断から18年央からの景気後退を認定したようだ。

 9日に日本工作機械工業会が8月の工作機械受注額の速報を公表しているが、これによれば8月の工作機械受注額の総額は678億9100万円で、前月比97.3%と減少傾向が続いている。前年同月比については76.7%と2割を超える大きな減少となっている。内需と外需の内訳で見ると、内需が230億4100万円で、前月比が92.9%と減少、前年同月比は61.4%と4割近い大きな落ち込みとなっている。外需は448億5000万円で、前月比は99.7%とほぼ横ばいながらわずかに減少、前年同月比は88.0%と1割を超える減少となっている。

 今年の1月から8月までの累計でみると、受注総額が5476億9900万円で、前年同期比が62.8%と4割近い大幅な落ち込みとなっている。内需と外需別の内訳をみると、内需が2063億8100万円で前年同期比が59.8%と4割を超える大幅なマイナスとなっており、一方外需は6413億1800万円で、前年同期比は64.8%と3割超えのマイナスだ。

 昨年までは米中摩擦を契機にした世界経済の落ち込みで外需の落ち込みが目立ち景気動向の足を引っ張っていた形であったが、今年に入って内需の大幅な落ち込みが目立つようになっている。おそらくこれは新型コロナ感染症の影響で外需要因よりも内需全体の落ち込みが反映されたものではないであろうか。コロナの影響による世界経済の落ち込みも軽視できないが、それ以上に内需の落ち込みが目立っていることは、日本経済の現況が極めて深刻な状況にあることを示唆している。(編集担当:久保田雄城)

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