コロナ禍でのREIT市場 今後の行方は
2020年9月15日 17:13
●コロナで苦境のオフィスREIT
好調な米国の株式市場とは裏腹に、オフィスREITの価格は戻っていない。2月半ばから比べると、東海岸と西海岸に投資するオフィスREITの時価総額は約半値となっている。日本の東証REITオフィス指数も2月半ばから、3月中旬に約半額まで下がったが、未だに半値戻しもしていない。
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コロナ禍で、オフィス需要の変化が大きく影響している。
●REITはお得な投資?
不動産投資信託(REIT)は、オフィスビルやマンションなどに投資し、賃料や売却益などを得て、投資家に分配する仕組みだ。“一口大家さん”とも呼ばれる。
インカムゲイン狙いの投資家に定評があり、REIT自体の価格が上がれば、売却益も期待できる。
しかし、株式投資や他の投資信託同様にリスクはあり、不景気などで空室率が高くなれば、賃料収入が下がり、分配金やREIT自体の価格も下落する。
日本版のJ-REITは、金融機関からも借入れしているので、金利が上昇すると収益が下がる。ゼロ金利の終了を匂わすようなニュースがあるだけで、REIT市場が大きく売り込まれる可能性もある。
J-REITは2001年からのスタートで、米国に比べると歴史も浅く、米国のREITと比べれば、時価総額の規模では10%程度に過ぎず、成長余地がまだまだあるとも言われている。
●REIT市場はコロナ前に戻れるのか?
不動産市場にとって、コロナ禍で最も影響を受けやすいのがオフィスビルだろう。
米国の都市で失業率が最も高いニューヨークでは、オフィスビルの利用が未だにほぼゼロになっている。ニューヨークに限らず、コロナウイルスの感染が収まっても、テレワークが主流になるなら、オフィス需要は当然元通りにはならない。
オフィスに限らず、感染拡大で宿泊需要や商業施設の利用者の減少は、ホテルや商業施設へ投資しているREITにも大きく影響する。感染が収まっても、賃料相場が下落する懸念はつきまとう。
とはいえ、米国10年国債のゼロ金利が続くなら、利回りが低下としても、まだまだREITの方が利回りは高い。各国の中央銀行による大規模金融緩和のお金はREITに流れる。
コロナ不況が続く限り、金融緩和も終わらないことを考えれば、REITも悪材料ばかりではないかもしれない。 (記事:森泰隆・記事一覧を見る)