ISSを襲う「電子の豪雨」の原因を解明 極地研や早大の研究

2020年9月6日 17:37

 国立極地研究所や早稲田大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などからなる研究グループは4日、国際宇宙ステーション(ISS)を襲う「電子の豪雨」の原因が、プラズマ波動であることが明らかになったと発表した。

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 ISSに搭載された高エネルギー電子・ガンマ線望遠鏡等の観測機器と、ジオスペース探査衛星「あらせ」から得られた同時観測データを比較・分析することによって明らかとなった。この研究成果により、船外活動中の宇宙飛行士や、人工衛星を保護するための宇宙天気予報の精度向上等への貢献が期待される。

 研究グループには他に、茨城工業高等専門学校、名古屋大学、京都大学、金沢大学、電気通信大学が参加している。

■電子の豪雨とは?

 ISSは時に、高エネルギー電子の豪雨に数分間に渡り襲われることがある。その高エネルギー電子の量は通常の数百倍から数千倍にもなる。

 このような電子の豪雨は、船外活動中の宇宙飛行士の身体、特に目に害を及ぼす危険性があると共に、人工衛星に障害を生じさせる危険性がある。

 そこで、宇宙天気予報の精度向上が望まれるわけだが、そのためには電子の豪雨の原因について、解明が欠かせない。

 では、電子の豪雨はどのようにして発生するのだろうか?

 太陽風に由来するプラズマの大波が地球に押し寄せてくると、地球を取り巻く地磁気に沿って、そのうちの、電子(-)は明け方の方に、陽子(+)は夕方の方に流れていく。そして、この夕方の方に流れていった陽子によって、電磁イオンサイクロトロン波動(プラズマ波動)と呼ばれる一種の電磁波が発生し、この電磁波によってバンアレン帯にある電子が地球に向かって叩き落される。

 これまで電子の豪雨はこのようにして発生するのではないかと考えられてきたが、残念ながら確証はなく、推測にすぎなかった。

■ISSと「あらせ」による同時観測データの比較・分析で原因確証

 そこで研究グループは、ISSが電子の豪雨に襲われた時の、ISSの高エネルギー電子・ガンマ線望遠鏡等による高エネルギー電子の測定データと、ジオスペース探査衛星「あらせ」によるプラズマ波動の測定データを比較・分析した。その結果、上記の推測に確証が得られたというわけだ。

 また、陽子が発生させる電磁イオンサイクロトロン波動以外にも、電子が発生させるコーラス波動や、静電ホイッスラー波動(いずれもプラズマ波動)によっても、電子の豪雨が発生することを突き止めた。

 研究グループによれば、電子の量の時間的な変化に、電磁イオンサイクロトロン波動は準周期的、コーラス波動は不規則、静電ホイッスラー波動はなめらかという特徴があるという。

 今後は、放射線帯での電子の消失、ISSでの被ばく、脈動オーロラ、大気へのインパクト等についてさらに研究を進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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