虫よけスプレーでヘッドライトの黄ばみ取り、思わぬトラブル招くことも

2020年9月4日 07:42

 クルマを長年使用しているとヘッドライトの黄ばみが気になるが、数年前から虫よけスプレーによる黄ばみ取りを紹介する動画やSNSを多く見かける。しかし、この方法は確かに黄ばみを除去することはできるが、使用方法を間違えると思わぬトラブルを招く恐れがある。

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 昔のヘッドライトは、ガラス製であったことから黄ばみとは無縁であったが、最近のクルマは樹脂製となり黄ばみが発生する。この樹脂は、ポリカボネート樹脂であり紫外線の影響をうけやすいため、ヘッドライトレンズはUVコーティングを施して対策をしている。だが長年使用していると、洗車キズや飛び石などによる小さなキズからUVコーティングが劣化して、黄ばみが発生する。

 この黄ばみを除去するには、ポリカボネート樹脂の表面を研磨すれば、クリアなヘッドライトに戻すことができるが、黄ばみのひどいヘッドライトをDIYで研磨するにはかなりの労力が必要となる。そんな黄ばみ取の救世主として紹介されていたのが、虫よけスプレーだ。

 虫よけスプレーがヘッドライトの黄ばみを取る原理は、スプレーに含まれるディート(ジエチルトルアミド)が樹脂を溶解させるためだ。2016年からはディート濃度が30%の商品も販売されるなど、黄ばみ取りには大きな威力を発揮する。またスプレー内のオイルがレンズの小さな穴などの隙間を埋め、綺麗なレンズを取り戻すというわけだ。

 しかしこのディートは、樹脂を溶解させるので、ボディに付着させると同じく樹脂の塗装被膜を溶解させてしまう。そのため使用する際、ヘッドライトレンズに直接吹きかけることは、ボディに飛散させる恐れがあるので避けなければならない。

 そして成分を残さないために、使用後は綺麗に水洗いも必要だ。樹脂を溶かすディート成分が多く残留すれば、レンズに深刻なダメージを与える危険があるからだ。

 では、虫よけスプレーでどの程度効果が持続するのかといえば、これは一時的なものでしかない。というのも、ポリカボネート樹脂を守るために、純正ではUVコーティングが施工されているが、虫よけスプレーは、このUVコーティングを全て取り除いてしまう。すると、ポリカボネート樹脂が完全に露出し、劣化スピードが格段に上がることになる。

 ヘッドライトを適切に修復するには、黄ばみを研磨するのと同時に古いUVコーティングも完全に除去してから、新しいUVコーティングの施工をしなければならないのだ。虫よけスプレーでは一時しのぎでしかなく、使用方法を誤ると、ボディに深刻なダメージを与える恐れがあることを覚えておいたほうが良いだろう。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る

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