「いいオフィス」がいいオフィスの理由

2020年9月4日 16:53

 働き方改革で増えつつあったテレワーク。「緊急事態宣言」を契機とした企業の導入が拍車をかけた。宣言解除後もテレワークは定着し、「オフィス不要論」も聞かれるほど。現にオフィスの解約や縮小移転が増加している。空室率が、東京都心5区では7月まで5カ月連続上昇し2.77%(三鬼商事調べ)に。対してシェアオフィスやコワーキングスペースの需要が増加している。

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 そうした中、設立2年余りの「いいオフィス」という新参組が展開しているコワーキングスペースが興味深い。

 フランチャイズ方式で全国展開を積極的に進めている。8月中旬で約160店舗が稼働。加盟店(フランチャイジー)の義務は、「いいオフィス」のロゴを掲げ、利用会員は所定のシステム上に登録するだけ。

 最大の注目点は独自の利益分配方式。通常のフランチャイズ方式では利用者が1回利用ごとに料金を払い、その一部が加盟店に分配される。対して「いいオフィス」の場合は、月額2万円という定額を利用者である会員が支払う。会員の利用時間に応じて、加盟店の分配金が変わってくる。

 具体的には、こんな具合だ。会員登録すると、登録加盟店にはまずインセンティブが発生する。会員はその登録店舗以外の「いいオフィス」全国約160店舗が利用可能になる。全国のどの「いいオフィス」にチェックインしたかはすべて本社に情報が集まるシステムになっている。月末に利用時間を集計して、各会員の利用時間を按分。利用した店舗に翌月支払う。

 1人の会員が支払う月額2万円のうち、インセンティブは毎月3000円が登録した店舗に、残りの12000円は利用店舗に使用時間に応じて分配、5000円が「いいオフィス」本体の収益という次第。

 「独自のビジネスモデルを考えるまで2年かかった」と話す龍崎宏社長はこんな風に語っている。「1回あたりの金額がいくらか、という形では収入にバラつきがでる。人によって月間30日使う場合もあるが平均で月12~15日。1回単位で1000円取ってもよいが、うちが目指すのは全国に1万拠点体制。1万拠点あると、午前中は渋谷、昼過ぎに池袋、夕方から品川といった1日3拠点使いたいといったニーズもでてくる。

 また、日本だけでな、世界中で使えるようにしたかった。既にフィリピンには『いいオフィス』がある。目下月額1万円。当社の前身のLIGがフィリピンに進出しており、200人ほどいるエンジニアのために大きなオフィスを借りている。その一部を『いいオフィス』にしている。さらに現地の日系企業に活かしてもらい、そこでコミュニティを作ってきた。日本の『いいオフィス会員』からフィリピンの『いいオフィス会員』に仕事を発注することも可能。働き方をどんどんアップデートしていくような場所にしたい」。

 全国に1万拠点となれば地方の小さな町でも、「いいオフィス」はコンビニのように点在する。ワークスペースとして自宅近くなど選択肢が大きく増える。1店舗が満室だとしても、その付近にまた別の「いいオフィス」店舗があれば問題はない。フランチャイズ方式ならではの強みといえる。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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