電力の潮流を制御し自然エネルギーの系統安定化を実現 電通大などの研究

2020年8月28日 17:09

 昨今の環境問題により、太陽光や風力などの自然エネルギー発電は多くの期待が寄せられている。しかし、その大量導入は電力系統を不安定にさせるため、運用面におけるブレイクスルーが必要不可欠とされてきた。電気通信大学と慶應義塾大学の共同研究グループは27日、電力の「潮流」の制御により、系統を安定化させる方策を開発したと発表した。

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 太陽光や風力などの自然エネルギーは、天候などの環境に発電量が大きく依存することが知られている。そのため、常に需要量に応じた電力を供給するための制御が難しく、大量の自然エネルギーを導入する上での大きな問題となっている。電力系統の安定度が落ちた場合、発電機の脱調やそれに伴う停電などの障害を引き起こす原因となり得る。

 そこで研究グループは、米国の電力系統を模擬したシミュレータを用いて解析を行った。その結果、電力潮流状態が系統の安定度に大きく関係しているという知見が得られた。つまり、発電量の総量だけでなく、各発電所や各需要地での電力量のバランスが重要ということである。

 この結果を基に研究グループは、発電所ごとの発電量の配分を適切に変化させる制御アルゴリズムを開発。その制御アルゴリズムによってシミュレーションを行ったところ、電力系統の安定度が向上したことが確かめられた。電力系統に擾乱が加えられても、基準周波数である50Hzから大きく変動することはなかったという。自然エネルギーは擾乱が発生しやすい特徴を有するため、このような擾乱に対する耐性は大きなブレイクスルーになり得る。

 太陽光や風力などの自然エネルギー自体は発電量の調整は難しいが、火力発電などの発電量は調整が可能である。また、電力潮流の制御のためには、需要側の電力量の調整も有効である。本研究で得られた知見を基にこれらを組み合わせて、経済性と電力系統の安定性を両立させた制御方法の実装が期待される。

 今回の研究成果は26日付の「IEEE Transactions on SmartGrid」誌のオンライン版に掲載されている。

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