種子・ゲノム編集、食糧危機背景に世界の農作物バイオ市場は30年に420億ドルへ
2020年8月21日 08:57
3月3日に種苗法の改正が閣議決定され3月国会で成立を目指す予定であった。しかし、有名芸能人がこれに疑問を表明するなどこの問題に賛否がわき上がり、結局この改正案は見送りとなった。多くの反対を生んだ理由の主なものは、この改正によって種苗のユーザー農家の年間コストが増加する可能性が大きいからだ。
日本では育種された種苗の権利保護が国際的に見て遅れていると指摘されてきた。育種企業は膨大な研究開発コストを投じて育種を行うが一般農家へこれを販売するときに十分な価格を設定できず、十分な利益を得て研究開発費を確保出来ていない現状だ。日本の農業の国際競争力を維持・強化する上でも育種企業が十分利益を確保出来るよう一定期間一般農家が使用料を支払って新しい種苗の価格を低く抑えようとするのがこの改正案の胆であったと言える。
市場調査業のグローバルインフォメーションが、これに関連する調査レポート「農業における遺伝子技術:2020年~2030年の予測、市場、技術」を8月11日に公表している。レポートによれば、21世紀の農業は大きな課題に直面しているという。世界の人口は50年までに100億人を超えると予想されており、国連の予測では現在の食料生産量の70%分を追加生産する必要があるという。
この課題に対する解決策としてはバイオテクノロジーの利用が考えられ、農業作物で使用されている遺伝技術については遺伝子組み換え、ゲノム編集、育種戦略を含む技術的、市場的な対策があり、これを実効的にする規制も同時に存在する。遺伝子組み換えに関しては拒否的な消費者の態度が目立ち、遺伝子組み換え作物の導入には難色を示す国が多く、多くの国が規制を強める方向で動いている。
農業の課題としては品種改良のみでなく病原菌や除草剤の代替なども21世紀の大きな課題であり、これらも含め農作物におけるバイオテクノロジー導入ニーズは高まりつつある。その中で注目を浴びている手法がCRISPR技術などのゲノム編集技術であろう。ゲノム編集は遺伝子組み換えに比べ自然界の変異に近く人体や環境への悪影響は小さいと考えられている。
今後10年間、こうした市場でどのような技術革新が進み市場の拡大が起こっていくかが注目される。上記のような状況からレポートでは「世界の作物バイオテクノロジー市場は2030年に420億米ドルに達すると予測」されるとしている。(編集担当:久保田雄城)