骨の形態がもたらす難産 母子の「協力」で出産することを発見 京大の研究
2020年8月20日 07:59
直立二足歩行と大きな脳により、ほかの哺乳類よりも難産であるヒト。京都大学は18日、ヒト同様に難産であるアカゲザルをX線CT撮像などで調べた結果、母の骨盤と子の頭蓋骨の形態がマッチしていることを突き止めたと発表した。
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■直立歩行と大きな脳がもたらすヒトの難産
ヒトは直立二足歩行を可能にするために骨盤が進化する一方、産道が狭くなっている。加えて脳が大きいため、新生児の頭部は母親の産道に迫る大きさである。骨の形態によりヒトは出産が難しいが、難産を克服するよう骨盤が大きく進化していない。こうした「分娩のジレンマ」は人類学的な研究テーマになっていた。
こうしたヒトの難産を克服するために、新生児の頭部と母親の骨盤の形が適応しているという仮説が近年提唱されている。だが、この仮説を検証するために母子の形態をヒトで観察することは非常に困難で、実証できていなかった。
■ヒト同様に難産であるアカゲザル
京都大学の研究グループが着目したのが、ニホンザルやアカゲザルが属するマカクザルだ。ヒトと同じように、産道に対する新生児の頭部サイズが大きいことがマカクザルでも確認されている。
そこで研究グループは、アカゲザルの母子12組のデータを7年かけて収集。周産期のアカゲザルをX線CTで撮像し、三次元モデルを使って出産のシミュレーションを行った。
その結果、マカクザルでは母親の骨盤と新生児の頭の形態が適応していることが判明した。産道に近い部位ほど、母親の骨盤と新生児の頭の形態とがより適応しているという。研究グループはこうしたアカゲザルの母子の「協力」により、難産の緩和に役立っていると考察している。
研究グループでは、アカゲザルとヒトの共通祖先に、母親の骨盤と新生児の頭とが適応する起源があるとみている。これによりヒトは脳を巨大化できるようになった可能性があるとし、人類の進化の謎が、別角度から解明されるかもしれないと期待を寄せている。
研究の詳細は、米国科学アカデミー紀要にて18日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)