アスカネットは調整一巡、空中結像ASKA3Dプレートの中規模ロット受注目指す
2020年8月18日 08:50
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する葬Techや、非接触ニーズで注目されている空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。21年4月期は新型コロナウイルスの影響で減益予想だが、ASKA3Dプレートの中規模ロット案件の受注獲得を実現したいとしている。量産期入りが接近しているようだ。中期的に収益拡大を期待したい。株価は6月の年初来高値から反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。なお9月7日に第1四半期決算発表を予定している。
■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、新規分野では空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。20年4月期の売上構成比はMDS事業38.9%、PPS事業59.5%、AI事業1.6%だった。
MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場である。いずれも景気変動の影響を受けにくい特性や、下期の構成比が高い季節特性がある。
なお17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボットと資本業務提携、18年3月全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社と資本業務提携、20年2月AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携した。
■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進
MDS事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。20年4月期末のハード設置件数は2562カ所、19年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が35.6万枚、電照焼増枚数が13.7万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、推定市場シェアは約30%(1位)である。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。19年12月には葬祭業者向けクラウド型印刷物作成ツール「SoSign(葬サイン)」の提供を開始、20年1月には葬儀社用Webサイト生成ツール「お葬儀.jp」の提供を開始した。
8月3日には「tsunagoo」の機能として、新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加すると発表した。
■PPS事業はOEMが拡大
PPS事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。20年4月期時点で約4590社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約45万冊提供している。
またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。OEMを中心とする需要拡大に対応するため、19年8月本社隣接地の新工場が稼働した。
■AI事業は空中結像ASKA3Dプレートの量産期入り接近
空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。新バージョンの樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社に試作品を販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。
生産面では19年5月、一定水準以上の品質の安定と歩留まりの向上を実現できたため、月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行した。一部工程の生産設備を増強することで、比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できるとしている。
20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化および生産体制の確立を目指すとしている。本格受注・量産化への期待が高まる。
20年7月にはASKA3Dプレートを活用した非接触受付機が、くら寿司の回転寿司チェーン「無添くら寿司」店舗での実証実験に採用された。国内外450店舗以上展開されている「無添くら寿司」店舗での設置拡大が期待される。
■21年4月期減益予想
21年4月期の業績(非連結)予想は、売上高が20年4月期比3.2%減の63億68百万円、営業利益が38.5%減の4億36百万円、経常利益が33.7%減の4億71百万円、純利益が35.2%減の3億25百万円としている。配当予想は3円減配の7円(期末一括)としている。
上期はMDS事業とPPS事業が新型コロナウイルスの影響を受けると想定し、PPS事業の稼働率低下に加えて、人件費、研究開発費、広告宣伝費の増加も影響して減益予想としている。ただしASKA3Dプレートの初の中規模ロット案件の受注獲得を実現したいとしている。量産期入りが接近しているようだ。AI事業も寄与して中期的に収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
■株価は調整一巡
株価は6月の年初来高値から反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。8月17日の終値は1446円、今期予想PER(会社予想のEPS19円36銭で算出)は約75倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.5%、前期実績PBR(前期実績のBPS341円45銭で算出)は約4.2倍、時価総額は約253億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)