まもなく星が誕生する場所を特定 カギとなった重水素の存在 国立天文台など

2020年8月6日 07:46

 材料となる塵やガスが集まることで、星は誕生する。国立天文台・野辺山宇宙電波研究所は4日、オリオン座にある「分子雲コア」と呼ばれる分子ガスが集まった場所から、まもなく星が誕生する場所を特定したと発表した。

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■特定が困難な星誕生の瞬間

 塵やガスといった星間ガスのうち、「分子ガス」と呼ばれる主成分が水素分子であるガスから、星は誕生する。そのなかでも、密度の濃い分子雲コアはまさに星が誕生する現場である。分子雲コアの中心に向かってガスが重力により引きつけられることで、生まれたはがりの星である「原始星」が誕生すると考えられる。

 分子から放たれる電波をとらえることで、分子雲コアの観測は可能だが、その存在は原始星の誕生を保証しない。そのため、どの分子雲コアから原始星が誕生するかを特定することは困難だという。

■特定のカギとなる重水素

 野辺山宇宙電波研究所の研究者らから構成される国際グループは、問題解決のため重水素に注目した。水素よりも中性子が1つ多い重水素は、星誕生においてカギを握る。星が誕生する直前は水素に対する重水素の割合は高いが、星が誕生した後には、重水素の割合が減少するという。研究グループはこの点に着目し、分子雲コアのなかで重水素の割合が高い場所を探索した。

 探索には野辺山45メートル電波望遠鏡が活用され、オリオン座にある分子雲コアの重水素が測定された。これにより、まもなく星が誕生する現場の目録が完成した。

 研究グループはさらに南米チリのアルマ望遠鏡を活用し、星が誕生する直前あるいは直後だと判明した場所を詳細に観測。その結果、星が誕生する直前の場所でガスが分子雲コアの中心に向かって流れ込む様子の観測に成功した。一方星が誕生した直後の場所では、2つ目構造が発見された。

 研究グループは、これらの観測結果により、分子雲コアから星が誕生するメカニズムが明らかになるだろうと期待を寄せている。

 研究の詳細は、Astrophysical Journal Supplement Series誌にて8月に掲載予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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