形成まもない銀河を現在の宇宙の中で発見 AIが探索に貢献 東大など
2020年8月5日 13:46
人工知能(AI)の一種である機械学習。東京大学は1日、すばる望遠鏡が取得した大規模データを機械学習で処理したところ、現在の宇宙に残る形成まもない銀河が複数発見されたと発表した。
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■初期宇宙で多く作られた銀河
多くの星が集まる天体が銀河だ。「ダークマター」と呼ばれる目に見えない物質が塵を引き寄せることで、銀河が形成されたというのが一般的な見解だ。
質量の多い重元素は、星形成を通じて徐々に作られていった。そのため、初期宇宙の形成まもない銀河には重元素は含まれていないと考えられている。だがこうした、形成まもない銀河は現在の宇宙でも存在する可能性があるという。
東京大学、国立天文台の研究者らから構成されるグループは、形成初期の銀河を探索するため、すばる望遠鏡が集めた大規模データを活用した。ハワイ・マウナケア山頂のすばる望遠鏡には超広視野主焦点カメラ(HSC)が搭載されており、ダークマターの分布などを広い視野を活かして探索できるという。
■機械学習で候補を絞る
すばる望遠鏡の大規模データには約4,000万個の天体が含まれ、その中から形成初期の銀河を見つけ出すことは困難だ。そこで研究グループは、機械学習で形成まもない銀河の候補を絞り出した。理論モデルによって予想される色を学習させることで、形成初期の銀河が選別されるという。約1年の探索の結果、27個まで候補を絞ることに成功した。
研究グループは、すばる望遠鏡やケック望遠鏡で形成初期の銀河の候補を追観測し、天体の元素量を調べた。その結果、約4.3億光年彼方の「HSC J1631+4426」銀河は、史上最低の酸素含有率であることが判明。その量は、太陽の1.6%に過ぎないという。
宇宙は加速膨張しているため、物質密度は減少傾向にある。そのため、重力によって塵などの物質が集まりにくくなり、いずれ新しい銀河は誕生しなくなると予想される。研究グループは、今回見つかった形成初期の銀河の候補は最後の世代の銀河であるかもしれないとしている。
研究の詳細は、米天体物理学誌Astrophysical Journalに3日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)