1億年前の海底堆積物で微生物が生息し続けていた JAMSTECらが発見
2020年8月3日 07:29
地球の表面積の約7割を占める海洋。その海底下の地層には無数の微生物が生息していることが知られている。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は7月29日、南太平洋環流域の海底下から採集した堆積物サンプルで微生物が生息し続けていたことを確認したと発表した。
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■微生物の生息が困難な海底下地層
海底下にはプランクトンの死骸などが堆積する地層が存在する。こうした有機物が堆積した地層では、微生物が形成時から封じ込められていると考えられる。
陸に近い海底下地層には微生物が高密度で生息している一方、陸から遠い外洋はミネラル不足で海中にプランクトンが少ない。そのため、海底下地層の地層内には、微生物の死骸など有機物が少ないという。とくに南太平洋環流域の海底下地層は粘土質であり、密閉された環境下で微生物が現在も生き続けているかどうか不明だった。
■溶けている酸素で生き続けられた微生物
海洋研究開発機構、産業技術総合研究所、高知大学などの研究者らから構成されるグループは、南太平洋環流域の海底下から採取した堆積物内に微生物が生息しているかどうかを調査した。2010年10月から12月にかけて実施された「南太平洋環流域生命探査」で採集された堆積物は、430万年前から1億150万年前にかけて形成されている。これらの堆積物にエサを与えることで、微生物の培養を試みた。
その結果、酸素が溶け出ているサンプルでは微生物の増殖が確認された。約1億150万年前に形成された堆積物では、約99%の微生物が増殖したという。その一方で酸素を含まない堆積物では微生物の増殖が確認されなかった。
1億150万年もの長い期間で微生物が生息し続けたことは、生命活動が地上に比べ大幅に低下していたことが原因だと考えられる。そのため、地上よりもずっと遅く微生物が海底下地層で進化していた可能性があるという。
今後は、培養させた微生物の調査を続けることで、海底下地層内の微生物の特異な進化システムが明らかになることが期待されるだろうとしている。
研究の詳細は、英Nature Communications誌に7月28日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)