ドル円が企業の想定を超えた安値に 米中対立でドル安・ユーロ高続くか

2020年7月28日 18:36

 米ドルが安い。ドル円は2月に一時112円台があったが、コロナショック以降下落が続き、直近では105円台まで下落している。日銀短観によれば、企業はドル円を107.86円と想定し、事業計画を立てている。想定を上回る円高が続けば業績の下押しとなるだろう。

【こちらも】【ドル円・7月第4週】「やはり戻り売り」来週以降の展開は超重要【テクニカル分析】

■主な企業のドル円想定レート

 ・日本電産  105円(2021年3月期 1Q)
 ・トヨタ   105円(2020年3月期 4Q)
 ・村田制作所 107円(2020年3月期 4Q)
 ・任天堂   105円(2020年3月期 4Q)
 ・ファナック 100円(2020年3月期 4Q)
 (参考)全規模・全産業 107.86円(2020年6月 日銀短観)

■米ドルインデックスは93pt台まで下落 米中対立が原因か

 ドル円は、円が買われ下落しているというよりは、米ドルそのものが弱いようだ。米ドルインデックスはコロナショック以降も90後半で推移していたが、7月中旬から下落傾向が強まり、直近では93ポイント台まで下落した。

 原因と考えられるのが米中対立の激化だ。香港で6月末に「国家安全維持法」が施行されて以降、米国は中国に対する圧力を強めた。7月14日に「米香港自治法」を成立させ中国に対する制裁を強め、24日にはヒューストンの中国総領事館を閉鎖させた。中国は成都の米領事館を閉鎖させ、報復している。

 米中はファーウェイ問題や南シナ海の領有権など、お互いに譲れない問題を多く抱えている。米中の摩擦が長引けば、米ドルがさらに安くなる可能性がある。

■ユーロはコロナ基金と米中からの逃避で上昇

 米ドルが下落する一方、需要を集めているのがユーロだ。21日に7,500億ユーロの欧州復興基金が成立し、コロナウイルスによる被害が大きい国を支援する体制が整った。市場はEUの団結を好感したようだ。

 また、米中対立から資金を逃避する動きもあろう。米ドルからの逃避はもちろんだが、経済の中国依存が高いオセアニア通貨も上値が重い。英ポンドもEUとの離脱交渉で問題を抱えているため、消去法的にユーロが選好されやすい状況だ。

 米中の対立が長引けば、ドル安・ユーロ高が続きそうだ。(記事:ファイナンシャルプランナー・若山卓也・記事一覧を見る

関連記事

最新記事