恐竜の生息分布拡大や大型化にモンスーンが与えた影響を解明 東大ら
2020年7月25日 15:21
モンスーンと呼ばれる地球規模の季節風は、日本の梅雨をはじめとして世界各地の環境や生態系に大きな影響を与え続けている。恐竜が誕生した時代に発生した1000万年スケールでの気候変動も、モンスーンが影響していることが判明した。東京大学らの共同研究グループは23日、その原因や生態系についての影響に関する研究内容を発表。その研究内容には、恐竜の生息分布の拡大や大型化の原因の手がかりとなる内容が含まれている。
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研究グループは、モンスーン活動に影響を与えうる要因として「ミランコビッチ・サイクル」と呼ばれる地球軌道の周期的な変動に着目。北米や日本の地層を調査したところ、湖水位や砂漠分布、放散虫堆積速度などの変化がミランコビッチ・サイクルの1000万年周期に対応していた。
これらの地質記録から、ミランコビッチ・サイクルに伴って降水分布などのモンスーン活動が変化したことが確かめられた。また数値解析の結果、モンスーン活動の変化から、降水分布および大陸風化により大気中二酸化炭素濃度変化が説明できることも判明。
この1000万年周期の地球環境の変化は、生態系にも大きな影響を与えていたことが確かめられている。寒冷・湿潤な気候の時代は陸上の脊椎動物が分布を拡大し、大型化する傾向がある。今回の研究では、モンスーン活動の活発化で湿潤な環境になったことで、恐竜が特定の時代に生息域を一気に拡大した可能性が示唆された。また、恐竜が大型化したのもモンスーン活動の変化によって寒冷化が進んだことが、要因の1つであると考えられる。
ミランコビッチ・サイクルおよびモンスーンの関係性は、地球史を通じて生じていたと考えられる。また、ミランコビッチ・サイクル自体は太陽系の天体間で常に生じる一般的な現象である。そのため、この新しいメカニズムは恐竜誕生時代以外にも適用可能な視点となる可能性がある。本研究の成果は、地球環境史と生命史のダイナミクスを解読する新たな手がかりとなることが期待される。
本研究の成果は23日付の「Scientific Reports」誌オンライン版にて掲載されている。