日本の潜在成長率、新型コロナ影響し21年後半までマイナスか ニッセイ基礎研究所
2020年7月13日 11:07
ニッセイ基礎研究所は10日、日本の潜在成長率が2021年後半までマイナスになる可能性があるとの試算を発表した。2019年の消費増税以降、GDPの成長率はマイナスが続いていたが、新型コロナウイルス感染拡大は潜在成長率にも影を落としている。
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■潜在成長率は景気循環の影響を受けにくい
潜在成長率とは、「中期的に持続可能とされる経済活動の規模のことで、いわば一国の経済の基礎体力(実力)を表す推計値(国際通貨研究所HPより引用)」だ。以下のように計算される。
潜在成長率=潜在労働投入量の伸び率 × 労働分配率 + 潜在資本投入量の伸び率 × 資本分配率(=1-労働分配率) + TFP(全要素生産性)上昇率
景気循環に左右されにくい数値で、日本はリーマンショック以降はプラスで推移していた。日本銀行によると、2019年後半の潜在成長率は0.13%で、低い数値ながらマイナスとはなっていない。
しかし、実際には現実のGDP成長率の影響を受ける傾向がある。新型コロナウイルス感染拡大による経済の停滞は、潜在成長率にも影響を与える可能性が出てきた。
■潜在成長率は2020年7-9月期にマイナスになる試算
ニッセイ基礎研究所は、新型コロナウイルス感染拡大により現実のGDP成長率がマイナスとなった場合、潜在成長率がどの程度下がるか試算した。
試算によると、2020年1-3月期は0.6%のプラス成長だったが、2020年7-9月期にマイナスに転じ、2021年10-12月期に0.4%減までマイナス幅が拡大すると見られる。
■過度な悲観は不要
潜在成長率はその国の真の実力を測る数値だが、仮にマイナスに転じたとしても、日本経済の実力が落ちたと判断するのは早計だ。潜在成長率はあくまで推計値であり、特に新型コロナウイルス感染拡大による経済制限は一時的な処置だからだ。
潜在成長率はこれまで過去にさかのぼって数値が修正されてきた経緯がある。これは、潜在成長率の計算に用いるデータが改定されてきたためだ。そのため、充分な幅を持って見る必要がある。
今後新型コロナウイルスのワクチン開発や、新たな生活様式に則した需要の創出などで現実のGDP成長率がプラスになる可能性もある。潜在成長率がマイナスになったとしても、過度な悲観は不要だろう。(記事:ファイナンシャルプランナー・若山卓也・記事一覧を見る)