バフェット氏のバークシャー・ハサウェイ、天然ガス事業会社を買収
2020年7月10日 11:57
●バフェット氏が天然ガス輸送事業を買収
米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社のエネルギー部門、バークシャー・ハサウェイ・エナジーが、米ドミニオンエナジー社から天然ガスの輸送・貯蔵事業を買収した。
【こちらも】バフェット氏が見据えるアフターコロナ
買収額は40億ドル(約4300億円)で、債務も引き受けることに合意した。債務を含めれば、97億ドル(約1兆380億円)となる。
新型コロナウイルス感染以降、バークシャー・ハザウェイとしては初の大型買収となった。
●苦境が続く天然ガス市場
コロナ禍以前から、米国の生産量急拡大と世界的な液化天然ガス(LNG)の供給増大によって、供給が需要を大きく上回っている状態だった。
新型コロナウイルスの感染拡大による各国の都市封鎖やヒト・モノの移動制限が、国際旅客・運輸需要に大きな影響を与え、原油や天然ガスなどの資源エネルギーの需要は大きく落ち込み、価格も暴落している。
4月にはNY原油先物価格がマイナスを記録したこともあった。天然ガス価格も6月末に約25年ぶりの安値を記録。今後も先行きは不透明で、2020年の世界の天然ガス需要は、前年から7%以上減少するという見方もある。
●バフェット氏がなぜ天然ガスに?
バフェット氏は、5月に米航空会社株を全て売却したことで話題になったが、なぜ資源の方は買いなのか?
天然ガスは再生可能エネルギーほどの成長は見込めないが、石炭や石油ほどの温室効果ガスの排出が少なく、決して見通しは悪くない。電気自動車(EV)時代に突入しても、石油ほどの落ち込みはないと見られている。むしろ発電所で使用される天然ガスの需要は伸びるとも言われている。
ドミニオン社は、日本からキューバまでの距離に相当する約7700マイル(約1万2400キロメートル)のパイプラインや、貯蔵施設を持ち、それらのインフラを買収することで安定的に稼ぐことができる。
今回の買収劇は、バフェット氏の後継者候補と目されるエネルギー部門のアベル副会長が主導したと見られている。アベル氏は複合企業を志向する考えを示しており、今後もアベル氏主導での買収劇があるかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)