新型コロナが日本人の働き方を変える! 富士通が在宅勤務とスーパーフレックス制を本格導入

2020年7月10日 07:25

 新型コロナウイルスがもたらしたものは限りない。直接的には「感染の恐怖」だ。新型と名付けられているだけに、予防や治療方法は手探りで進めるしかない。「泥棒を捕まえてから、縛り上げるための縄を編む」行為を、俗に「泥縄式」と言う。たとえは悪いが、予期せずに発生した事態に、後から対応することを表現した言葉として、当を得ていることは間違いない。

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 厄介なのは感染してから発症するまで、患者自身に自覚がない時期にも他者に感染させることだ。このため、全世界で「3密を避ける」ことや、マスクを着用することが当たり前になった。

 欧州ではテロリストへの不安から、マスクを着用している人への抵抗感が強かったため、マスク着用が社会的に認知されるまでに若干のタイムラグを要した。それが初期の感染拡大に関して要因の1つだった、という社会の合意が形成されたため、現在ではマスク着用は当然と受け止められている。

 再会を喜ぶ抱擁や握手も感染を広げる要因と捉えられて、日本の「お辞儀」が見直されていると言うのだから、世界の社交に与えた影響の大きさも知るべきであろう。

 当初は、人が集まることや移動することが感染を広げる原因と捉えられて、飲食店や百貨店への出入りや旅行が控えられた。その影響は甚大で、既に廃業に追い込まれた飲食店も少なくない。百貨店や航空会社ですら、経営の先行きに不安を感じている人は多い。

 人々が通勤することにも感染の危険があるため、「在宅勤務」という過去に何度も話題になりながら、まともに向き合うことすら行われなかった勤務形態が認知された。上司の目が届かないところで、サボらず真面目に仕事をしてくれるのか、という心配をしている暇もないうちに現実は進んでいる。

 富士通が6日に発表したのは、グループ企業も含めて約120万平方メートル(約36万坪)に及ぶ国内のオフィススペースを、3年間で半減させるということだ。同時に勤務時間帯の制約がない「スーパーフレックス制度」の対象者を全社員に拡大し、在宅勤務を遂行するための環境整備費として毎月5千円が支給される。現在の単身赴任者についても、出張で対応が可能であれば単身赴任を解消する。

 仮に職員の半数を在宅勤務にすると、富士通のグループ全体で約8万人に及ぶ社員の半数である4万人に毎月5千円の環境整備を支給して、年間24億円の負担増となる。

 逆に経費の負担は減る。オフィスの賃貸コストが坪単価で15千円と仮定すると、半減される18万坪で節約される賃貸経費は年間27億円だ。1人当たりの通勤費が毎月1万円と仮定すると、年間48億円となる。大雑把すぎる計算だが、節約される経費が75億円(27+48)なので差引すると51億円(75-24)の経費削減になる。経費節約を目的とした施策ではないだけに、波及効果の有難味は大きい。

 在宅勤務と、勤務時間の制約がない「スーパーフレックス制度」、という2つのフリーハンドを社員に委ねても適正な勤務状況を確保するノウハウは、運用の中で模索することになるのだろう。日本のサラリーマンに新しい時代が到来するのみならず、社会の仕組みそのものが大きく変化する前触れと言っても過言ではない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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