ハイブリッド車とEV車 生き残りの道は

2020年7月9日 06:59

●メーカー別ハイブリッド車の進化度

 10年程前、トヨタ、ホンダ、日産3社のハイブリッド車レベルに関する筆者の印象は、「ダントツ首位のトヨタ」、「周回遅れの2位ホンダ」、「2位の背中が次第に遠ざかる日産」だった。

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 失礼ながら、日産がEVに軸足を移したのはハイブリッド技術に関するハンディが大きいと自覚したからだと、勝手に判断している。

 当時の日産は、某車種にハイブリッド車を追加することを目指していた。しかし、その普通のガソリンエンジン搭載のモデルですら、売れ行きが芳しく無い車種で、ハイブリッドモデルを追加しても、そのハイブリッド機種のお蔭で販売台数が急激に伸長するとは考えられなかった。

●EV車に逃避?

 中国がEVに土俵を移して、「適当なモーターとバッテリーを組み合わせれば何とかなる」と考えた様に、モーターとエンジンを複雑にコントロールするハイブリッドより、「一充電走行距離」の問題は、バッテリー技術の進歩に託すと、簡単に考えたのでは無いのだろうか?

 同じ性能のモーターとバッテリーを使って、「中国が作るEV車」と「日産が作るEV車」では、「車作りの歴史」に格段の経験値がある日産製に、軍配が上がるのは明白だ。

 何故なら、日産には「自動車」作りのノウハウが高度に蓄積されているからだ。サーキットでのスカイラインGTRや、ブルーバードのサファリラリーでの勇姿を思い出して欲しい。

 車は「原動機部分」と「足回り」が総合的に相まって「自動車」として成立する。

●EV車は「自動車」だ、甘く見るな

 7月2日にテスラの時価総額がトヨタを超えたと報道された。

 2019年に世界で1074万台を販売したトヨタを、36万7500台しか販売していないテスラの時価総額が超えるなんて異常事態だと思わないのか?

 EV車はあくまでも「自動車」だ。

 従来のエンジン(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)の代わりにモーターを搭載し、燃料系に代わって蓄電池を積んだだけで、車で大切な「足回り」に蓄積したノウハウを持たないメーカーに、まともな「自動車」が作れるのか?

●宝飾時計と実用時計

 投資家と称する人達は、ごく一部を除いて、「自動車」をまともに評価する能力は持ち合わせていない。

 世界の趨勢が「電動化」であり、高額車を先頭に掲げて市場に登場したテスラを、物珍しさで飛びついた購買層によって、一定のマーケットシェアを確保したのは事実だが、戦っているジャンルが異なる。

 今売れているのは、宝飾時計のジャンルだ。

 モデル“X”なら1,059万~1,299万 “S”でも989万~1,229万、一番安い“3”でも511万~と、高額だ。

 物珍しさで高額車を購入出来る層は、複数車両を併有することは容易い。他にも車を併有しているだろう。防水性能も耐震性能にも優れた普段使いの実用時計と、煌びやかでエレガントな宝飾時計を、複数持っている様に。

 しかし一般ユーザー層で1台しか保有出来ない人が、オンリーワンの自家用車として購入する場面で、同クラスの内燃機関(ガソリンやディーゼル)の車と、同等クラス、同等装備で同等価格の車を供給出来ないのであれば、意味ないだろう。

 それでもEVのハンディは解消されないままだ。

●EVで生き残るには

 プリウスの様なハイブリッドシステムの「内燃機関と電動モーターを巧みに制御する」には、高度な技術が必要だ。

 中国が当初、ハイブリッドを優遇対象から除外したが、結局対象に含めたのも、単なる「電動車」では、「車社会が成立しない」と自覚したのでは無いか。

 EV車の現実的な解は、純粋な『電気自動車』では無く、BMWi3の様な『レンジエクステンダー』か、トヨタプリウスPHVに代表される『プラグインハイブリッド』か、日産ノートe-POWERの様な『シリーズHV』だろう。

 日産車なら、純粋な電動車である「リーフ」よりも、「発電専用のエンジンを積んだシリーズHV」であるe-POWERの「ノート」や「セレナ」、最近投入された「キックス」が現実的だ。

 はじめて輸入車が本格的に参加し、7カ国33社が出品した1970年の第17回東京モーターショーで、ミッドシップの「RX-500」と共に発表された、『マツダEX-005』というコンセプトカーをご存知だろうか?

 ショーモデルのため、特殊なスタイルだが、ロータリーエンジンを最適な状態で発電機として使用し、「一充電走行距離」の呪縛から解放したコンセプトが素晴らしい。

 「シリーズHV」のルーツはこの「EX005」まで遡るが、当面、ハイブリッドに関してはトヨタに後れをとっているので、日産は「シリーズHV」で稼ぐのが良いのかも知れない。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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