パワー半導体市場、ついに4兆円規模へ SiC 搭載車載インバータ等、開発加速

2020年6月28日 19:20

 富士経済が2020年6月に発表した調査結果によると、2019年に2兆9141億円だった世界のパワー半導体市場は、2030年までに4兆2652億円に達すると見込んでいる。中でも注目されているのは、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム系などの材料を用いた次世代パワー半導体だ。

 パワー半導体の市場全体では、まだまだ既存のSi(シリコン)パワー半導体が90%以上のシェアを占めているものの、次世代パワー半導体も順調な拡大を続けており、2030年には、2019年の455億円からおよそ6.2倍となる2831億円にまで膨らむと予測されている。

 とくに、Siパワー半導体に比べて、スイッチング損失や導通損失が少なく、温度変化に強いなどの利点から、劇的な低損失化を実現できるSiC パワー半導体は、電気自動車のオンボードチャージャーやDC/DC コンバータなどを中心に2018年頃から採用が進んでおり、富士経済の調査でも2030年には2019年比で4倍強となる2009億円の成長を見込んでいる。情報通信機器分野に強いといわれるGaNパワー半導体も着実に需要を広げてはいるが、SiCに比べて市場規模はまだまだ小さく、次世代パワー半導体市場は、SiC パワー半導体が牽引していくのは間違いないだろう。

 そんな中、SiC パワー半導体の市場をさらに加速させる出来事が発表された。

 中国のEV向けパワートレインの先進企業であるLeadrive Technology (Shanghai) Co.,Ltd.(以下、LEADRIVE)と、SiCパワーデバイスの世界的なリーディングカンパニーである日本のローム株式会社(以下、ローム)が、中国(上海)自由貿易区試験区臨港新区にて、「SiC技術共同研究所」を開設したのだ。6 月9 日には除幕式が実施され、両社は今後、同研究所において、SiC を中心とした革新的なパワーソリューション開発を行っていく。

 LEADRIVEは、xEVなどの新エネルギー自動車向けに、パワーモジュールや、モータ ・ インバータなどを提供するハイテク企業だ。 新エネルギー、電力変換、パワーエレクトロニクスの3分野を主力とし、100を超える国際特許を取得するなど国際的にも高い技術を保持している。実は、ロームとは2017年の創立時から協力関係を築いており、今回の共同研究所はその絆をさらに深めるものとなりそうだ。

 ロームも近年、益々の成長が期待されているxEVのアプリケーションに搭載するSiC の普及に注力しているが、車載のパワーモジュールとインバータに強いLEADRIVEとのコラボレーションによって、SiCの応用研究がさらに深まるだろう。

 除幕式に登壇したLEADRIVEの董事長兼総経理である沈捷(博士)氏も「SiC チップを搭載したSiCパワーモジュールの採用は、新エネルギー自動車分野では今後数年間の内に業界のトレンドになる。全世界の資源を収集し研究開発を加速することで、成熟したSiC 搭載製品の商品化を実現できれば、車載Tier1 メーカーとして非常に強い競争力を確保することにつながる」と話しており、共同研究所への強い意欲を見せた。

 SiCパワーモジュールの採用がxEVなどの新エネルギー自動車で進めば、半導体業界のみならず、日本の自動車業界全体にとっても大きな追い風となるだろう。今後の展開に期待したい。(編集担当:今井慎太郎)

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