銀河全体とは異なる棒状構造の分子ガス運動 国立天文台らが観測
2020年6月14日 07:57
国立天文台は11日、地球に近い渦巻銀河のガス運動を解析した結果、棒渦巻銀河の中心にある棒状構造のガスが、銀河全体とは異なる運動をしていることを捉えたと発表した。
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■天の川銀河も棒渦巻銀河に分類
銀河は、数多くの星が重力によって拘束された天体だ。当初一様に分布していた宇宙は、わずかなゆらぎにより小さな星の塊が誕生した。これが集まることで銀河が形成されたと考えられている。
銀河がどのように成長したかを考察する上で、分子ガスは重要な鍵となる。星間ガスの一種であり主成分が水素の分子ガスは、星が形成されるための材料だ。こうした分子ガスが銀河内でどのように運動するかを捉えるためには、物質から放射される電波を観測する必要がある。
■中心に向かいながら回転する分子ガス
国立天文台、北海道大学、筑波大学などの研究者から構成されるグループが着目したのが棒渦巻銀河だ。銀河は形状により、楕円銀河や渦巻銀河、不規則銀河などに分類される。渦巻銀河のなかでも中心部に棒状の構造をもつのが棒渦巻銀河で、棒状の天体から渦巻の腕が伸びている。
棒渦巻銀河は珍しい銀河ではない。渦巻銀河の約3分の2は棒渦巻銀河だ。太陽系のある天の川銀河も棒渦巻銀河だと考えられている。中心にある棒状の構造は古い星から構成されているという。
研究グループは、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の望遠鏡で地球に近い20個の渦巻銀河を観測し、一酸化炭素分子ガスの運動を詳細に解析した。その結果、棒渦巻銀河内の棒状の構造は円運動のほかに、銀河の中心に向かう運動を検出。ガスの速度を解析したところ、棒状構造が大きいほどゆっくり回転していることが判明した。
野辺山宇宙電波観測所は地球に近い銀河の観測を続けている。分子ガスの観測を行うプロジェクトが続いており、国立天文台のほかにも北海道大学や筑波大学、大阪府立大学、名古屋大学、関西学院大学など多くの大学が参加している。
研究の詳細は、日本天文学会欧文研究報告の12月号に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)