世界最速の和製スーパースポーツカーが発売! コロナの逆風を切り裂く走りできるか?
2020年6月6日 08:03
静止状態のクルマが、時速100kmに到達するまでの所要時間(0-100km/h)を競う、世界ランキングがある。カナダのサイト「TheThings」がまとめたものだ。加速性能が高いクルマにどんな意味があるのかと考える人には、関心を持てないランキングだろうが、こだわり始めるとキリがない魔界のような世界だ。
当然、ランキングの大半は名前を聞くだけで誰もがうなずく、ビックネームの自動車メーカーであり、果たして存分に乗り回す場所があるのかどうか疑問すら湧いてくる、とてつもないパワーと目も眩むような高額車のオンパレードだ。
0-100kmを2秒台で走り抜けた車群は名前だけにして、ランボルギーニのアヴェンタドールSVJとウラカン ペルフォルマンテ、マクラーレンの P1とスピードテール、ポルシェのタイカン ターボ Sと918 スパイダー、ホンダのアキュラNSX、日産のGT-R ニスモ、パガーニのウアイラ BC、SSCのトゥアタラ 、アストンマーティンのヴァルキリー、ブガッティのシロン、フェラーリのラ フェラーリ、アルティマのRS、ヘネシーのヴェノムF5で合計15台だ。
イタリア、ピニンファリーナのバティスタは電動モーターの1926馬力のパワーで、0-100kmの所要時間は1.9秒、4位にランクされた。
アメリカ、テスラのロードスターは3基の電動モーターを搭載し、2基が後輪駆動を担当、1基が前輪駆動を担当する独創的な4WD車で、同じ1.9秒を記録して3位に入った。
クロアチア、リマックのコンセプト 2は、4位のバティスタとほとんど同じパワートレインを搭載していながら、パワーを1941馬力まで高めて加速性能の向上を図ったことで、1~100kmではバティスタを0.05秒上回る1.85秒まで縮めて2位に食い込んだ。
そして、2位に0.15秒の差となる1.7秒を叩き出した日本企業アスパークのOWL(アウル)が、第1位を獲得した。電動モーター4基が駆動するEVは、出力が2013馬力のモンスターマシンだ。カーボンファイバー製のボディとマグネシウム鍛造ホイールで、軽量化を追求したことが奏功したか。マグネシウム鍛造ホイールは、日本のスポーツカーの歴史に燦然と輝くトヨタ2000GTが採用したことで、当時色々話題になったホイールである。
2秒台の15台には内燃機エンジン単独搭載車やハイブリッド車も含まれているが、2秒の壁を破った4台が全てEVであることは、現在の自動車業界の動向を象徴しているかのようだ。
アウルを送り出したのは、専門性の高い労働者派遣業を中核に幅広い分野で事業を展開している、大阪の企業「アスパーク」だ。「世界最速のクルマ」という話題は、企業イメージや認知度の向上には大いに寄与し、人材獲得へも抜群の波及効果を見せたことだろう。
残念なのは、販売開始の告知が新型コロナウイルス感染症のパンデミックと見事にバッティングしたことだ。当初4億円を超えると伝えられていた価格は日本円で約3.5億円と、限定50台を完売しようとする意気込みが感じられる設定だが、コロナによって世界中の様々な需要が軒並み蒸発してしまうという、最悪の時期に重なった不運は否めない。
なお、販売開始時点には、出力は2012馬力、0-100km/h加速は1.69秒、最高速は400km/hと最新スペックが告知されている。
プライベートコース内でなければ能力を発揮する場所すら存在しない、宝の持ち腐れの様なクルマが、コロナ隆盛の時代にどの程度の買い手に巡り合えるのか、興味は尽きない。
販売に至るまでの投資金額は膨大なものであろうし、設定価格で50台を売り切ったとしても利益計上につながる可能性はそう高くない筈だ。株式未公開企業のため財務状況は不明だが、資本金5000万円はありふれた中小企業といったところだ。コロナの逆風で販売台数が伸び悩むことも考えられるが、「高い学費を払った」程度で収まるとすれば、御の字ではないだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)