老舗店の倒産ラッシュ、小売りを中心に過去最多 酒小売はリーマンショック超え
2020年6月5日 07:50
新型コロナ関連の倒産は5月29日現在、全国で合計192件に達している(東京商工リサーチ調べ)。業種別では、インバウンド需要の消失、国内旅行・出張の自粛の影響で宿泊業が最多。次いで外出自粛で来店客減少や休業・時短に追い込まれた飲食業、百貨店や小売店など個人消費関連の業種が上位を占める。こうした新型コロナ関連の倒産の中には多くの老舗企業も含まれており、単なる不況とは様相を異にする商業文化の変容と言った側面も出てきた。
日本は世界有数の長寿企業大国として知られる。業歴100年以上の老舗企業は全国で3万社を超える。一方、近年では少子高齢化など経営環境の変化も加速し長い業歴を有するだけでは生き残りが難しくなってきているのも事実だ。こうした長期的な経営環境の悪化に加え現在、新型コロナ不況という100年に1度と言われる大規模な経済ショックに見舞われている。
帝国データバンクが5月29日、業歴100年以上の「老舗企業」の倒産、休廃業・解散動向について集計・分析したレポートを公表した。レポートによれば、2019年度の老舗企業の倒産・休廃業・解散件数は合計579件で、前年度比24.5%の大幅な増加になり、件数・増加率ともに過去最多を更新した。
業種別では、「小売」が209件で最も多く、次いで「製造」の114件、「不動産」30件とこれら3業種は過去最多を更新している。「小売」の中でも「酒小売」が26件で最多となり、酒小売が最多となるのは16年度の19件以来3年ぶりであるとともにリーマンショック時を超え過去最多となった。新型コロナによる外出自粛も影響していると想像できる。
老舗企業をめぐる経営環境は15年頃からの総人口減少によって市場規模の縮小が顕在化し競争環境が激化、地場の老舗小売店と郊外型ショッピングモールや大型量販店、インターネット通販との激しい競合が続いてきた。これに昨年10月の消費増税を機に事業継続を諦めたケースも少なくないようだ。さらに、今年度に入り新型コロナの影響で多くの企業で長期間の営業休止や業容の大幅縮小が余儀なくされるなど深刻な状況が続いている。5月15日にはアパレルの老舗レナウンが新型コロナによる影響で民事再生を申請するに至った。
レポートは「2020年度の老舗企業をめぐる市場退出動向は、特に新型コロナによる急激な環境変化に耐え切れずに倒産などを選択する老舗企業を中心に19年度の増加幅をさらに上回る規模での急増が予想される」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)