脳科学が太鼓判!「多読多聴」から始める外国語学習法

2020年5月30日 18:41

 スティーブ・カウフマン(Steve Kaufmann)さんは世界で最も有名なポリグロットとして、いろいろな言語でYouTube動画に出演し、効果的な外国語の勉強法を全世界に向けて発信している。

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 スティーブさんがこれまで学んだ言語は24カ国後。うち英語、日本語、フランス語、中国語など12カ国語は流暢に話せるレベルに達している。60歳を過ぎてからも新たに10カ国語以上の外国語を習得し、70歳を超える現在でもペルシア語、トルコ語、アラブ語の3カ国語を同時進行で学んでいる。

 スティーブさんは自身の経験から、「多読多聴」から始める外国語学習方法が最も効果的としている。外国語を学び始めて最初の3カ月から6カ月は、リスニングとリーディングに重点を置き、特にリスニングに70%以上の時間を費やすことが適当と考えているのだ。

 ネイティブの発音をしっかりと耳に叩き込んだその後で、発音に特化した短期トレーニングを実施するという。文法はルールだけざっと知っておく程度で十分という考え方だ。

 スティーブさんは多読多聴から始める外国語学習が良いと考える理由として、効率が良い、楽しい、低コストなどをあげている。そしてこの学習方法を成功させるためには、学習者が意欲をもって自主的に学ぶことが不可欠であることを強調している。言葉を学ぶプラットフォーム「LingQ」を開設しているので、興味のある人は動画と一緒に見て欲しい。

Youtubeチャンネル「Steve Kaufmann – lingosteve」

「LingQ」

 多読多聴から始める外国語の学習方法は、実は脳科学的にも非常に理にかなっている。

 脳神経外科医でバイリンガルでもある浜松医科大学の植村研一名誉教授も、外国語の学習初期に徹底してリスニングを行うことの大切さを強く説いている。

 植村教授は、大学時代に英語とドイツ語を授業で、フランス語を独学で、60歳を過ぎてから朝鮮語、中国語、トルコ語、スペイン語、ロシア語、ハンガリー語など12カ国後を学び、うちロシア語とポーランド語では特別講演を行ったことがあるという。その上、外国語の講師や医学通訳の経験も持つ。

 教授の論文によると、言葉を司る中枢は大脳皮質に散在しているという。

 聞いて理解することはウエルニッケ感覚性言語野が司り、言葉を話すことはブローカー運動性言語野の機能だ。書いたり発音したりは大脳皮質の他の部位でその機能を司るという。

 植村教授は、脳の血流の動きを測るMRIを使った研究で、外国語を聞き取り理解するためには大脳皮質のウエルニッケ感覚性言語野に当該言語の言語野を形成する必要があることを突き止めた。

 ウエルニッケ感覚性言語野に英語野、中国語野、日本語野といった神経回路網から形成される言語の中枢を作ることによって、外国語を聞いて理解できるようになるのだ。

 この言語野を形成する前にスピーキングの練習をしても、正しい発音で話すのは不可能ということになる。聞き取れない言葉を発音できるはずは無いからである。発音が不正確なまま、会話、文法、構文の勉強を進めれば、間違った発音が定着してしまう危険がある。

 学習初期に徹底してリスニングの洪水を浴びる外国語学習方法は、 スティーブさんの経験的にも脳科学的に見ても効果の高い学習方法であるということが立証されているのだ。

「脳科学から見た効果的多言語学習のコツ」(植村研一)(記事:薄井由・記事一覧を見る

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