水陸両用車「Panther」販売の米「WATER CAR」が生産終了 売却先探す
2020年5月26日 07:43
2013年から、“地上で最も楽しいクルマ”として水陸両用車「Panther(パンサー)」を製造販売してきた、アメリカの「WATER CAR」社が、売却先を探しているという。水陸両用車の新しいCARB(California Air Research Board)規制により生産を終了せざるを得なくなったことが理由で、特許、技術、金型、治具、工具治具と共に会社の売却先を探している。
WATER CAR社は1999年、世界で最も速い水陸両用車の制作に挑戦するために作られた会社だ。450hpのシボレーコルベットのエンジンを搭載したプロトタイプ「Python」を完成させ、地上で204km/h、水上では52km/hを達成、2010年にはギネスブックにも登録された。
しかし、速度を追い求め過ぎたPythonは、見た目がシボレーカマロのように見え、また低い車体からどこからでも水に入れるわけではないことがネックであった。そこで、2011年からPythonの技術を使い、より信頼性の高い水陸両用車の開発に着手し、2013年に市販車「Panther」をリリースする。
Pantherは、ユーザーからのニーズを反映し、乗り降りしやすい見た目はジープ風のデザインで、エンジンにはホンダ3.7リッターV6エンジンを搭載している。トランスミッションにより、駆動はタイヤとリア中央に積まれた、Panther JETにスイッチ一つで切り替えることが可能。その変形スピードは、僅か15秒というからクルマが入水してすぐボートにトランスフォームできる。
Pantherは、完成車のほかにエンジンとトランスミッション、そしてカスタムペイントが別となるベース車両の2タイプが販売されてきた。その価格は、完成車で19万8,000ドル(約2130万円。1ドル107.70円で換算)と高額であったが、世界中で100台以上が販売され、ドバイの皇太子が6台も購入したという。
水陸両用車自体は、それほど珍しいものではなく、1960年代にはすでに軍用など多くの水陸両用車が販売されてきた。だが見た目がクルマと変わらず、まるでスパイ映画のワンシーンのような優れた変形能力とスピードを持ったPantherは、瞬く間に多くの人から注目されるようになる。アメリカのABCが制作するリアリティテレビシリーズのほか、CNBCのジェイレノのガレージなどでも取り上げられた。
量産化に向けて、各車両をより安全にする基準を設け、そして改良を行いながら15年間開発を行い、ほぼ世界のすべての国でテストを重ねてきたWATER CAR社であったが、生産工場のあるカリフォルニア州の製造環境に関する法律改正により、州内での製造が困難となり、会社自体を売却することになった。
この売却には、WATER CARのすべての特許に加えて、Panther、Panther XL、およびPythonを構築するために必要な製造装置(金型、治具、工具治具)が含まれている。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る)