アフターコロナ支えるアナログ技術 進化する通信とIoTの安全・安心に必要なもの

2020年5月24日 19:58

 世界的に蔓延している新型コロナウイルスの陰に隠れて、すっかり話題が薄くなってしまっているが、世界は今、第5世代移動通信システム、通称5Gによって、大きな転換期を迎えている。

 5Gの特長は「高速・大容量」、「低遅延」、「多数端末の同時接続」。その通信速度は、現在主流として使われている4G・LTEと比べて約100倍。通信容量に至っては、最終的にはLTEの約1000倍にもおよぶとも言われている。

 「今のスマホの通信でも、とくに不便は感じていない」という声もあるかもしれない。確かに、携帯電話だけに限定すれば、個人ユーザーには、5G通信が主流になってもそれほど大きな違いは感じられないかもしれない。しかし、5Gの恩恵はスマホだけにもたらされるものではない。

 

 例えば、コロナ自粛の影響で急速にユーザーが広がったテレビ電話やビデオ会議、テレワークなどへの活用だ。途中で映像が止まったり、声が遅れて届いたりというような不便さは途端に解消される。また、遅延なく膨大なデータを送受信できるようになることで、離れた場所にある機器の精密な操作なども可能になる。例えば、モニターを接続してマニピュレーターを遠隔操作すれば、外科手術や重機の操作、危険な現場での精密作業なども容易に行うことができるのだ。

 また、5Gの活用で最も期待されているのが、自動車や産業機器などの分野のあらゆるアプリケーションにおいて導入が進んでいるIoTシステムとの連携だろう。モノのインターネット、IoTを次に進めるためには、5G通信は欠かせないものになる。

 自動運転技術の採用が進めば、将来的に公共のバスや商用車などの多くも無人の自動運転車に変わっていくだろう。最終的な自動運転車両はAIが自律走行するものになると予想されるが、だからといって放っておくわけにはいかない。安全管理の面から、管理センターなどで動きを把握し、一括で管統制する必要はある。その際に、各車両から遅延なくデータが送られて来なければ対応が遅れて大事故にもつながりかねない。また、非常時や緊急時にはセンターから自動運転車を操作して制御しなくてはならないこともあるだろう。そのためには、5G通信のような膨大な通信トラフィックが必要になるのは言うまでもない。

 

 産業分野においても同様に、5G 通信が普及することで、より複雑で繊細な制御も可能になり、工場などのスマート化もさらに加速していくだろう。

 しかし、高度な制御を行うためには、より多くの電子部品を搭載しなくてはならず、安全面で配慮しなければならないことも増える。家電や産業機器に搭載される各種異常検知システムでは、センサなどが発する微小な信号を高速で増幅し、マイコンなどが認識できる電圧レベルにする増幅器、「オペアンプ」が必要とされるのだが、高速タイプのオペアンプは、配線などが長くなった場合、増幅した電圧の精度が落ちてしまう。そのため、設計時にその対策に多くの手間がかかってしまう。さらに、オペアンプが微小な信号を増幅する際には、モーターなどから出る外部からのノイズも一緒に増幅されるため、EMI(外部からのノイズ)耐量の低いオペアンプだと、対策するための手間がここでもかかってしまうのだ。しかも、アプリケーションの部品点数が増え、高密度化が進めば進むほど、よりこれらのノイズ対策は大変になる。

 日本でこの問題に対応するオペアンプの開発に力を入れているのは、アナログ技術に定評のあるロームだ。同社が展開しているEMARMOUR?シリーズのオペアンプは、圧倒的なノイズ耐量があり、ノイズ設計の手間を軽減できるため、車載・産業機器市場を中心に、世界の各メーカーから高い評価を得ている。そして同社は今月、そんなオペアンプシリーズの最新のラインナップとして、異常検知に最適なCMOS 高速タイプを発表した。このオペアンプはただの新製品ではない。どれほど複雑な回路、配線の長い回路においても、微小な信号を増幅した時の電圧精度が変わらない業界初の高速オペアンプとして大きな注目を集めているのだ。これはメーカーからすると、これまで大変だったオペアンプのノイズ対策に悩まされることがなくなる画期的な製品である。

 世間は未だ、新型コロナウイルスの感染防止に関心が集まり、その対策に躍起になっている。でも、その渦中においても、技術は弛まず進化し続けている。5G通信やIoT、そしてそれを支える実直なモノづくりの力が、アフターコロナの日本に元気を取り戻してくれるカギになるのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)

関連記事

最新記事