木星の衛星形成の謎、新モデルにより説明 米大学の研究

2020年5月21日 18:30

 木星にある70以上の衛星のうち、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストはガリレオ衛星と呼ばれる大きな衛星だ。これらの形成メカニズムには謎が残る。米カリフォルニア工科大学の研究者らから構成されるグループは、この謎を解く新モデルを提案している。

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■衛星形成の謎

 木星の主要な衛星は公転軌道が特徴的だ。「ラプラス共鳴」と呼ばれ、イオ、エウロパ、ガニメデの公転周期は1対2対4の整数比になっている。イオは火山活動を行い、エウロパは氷で覆われ、ガニメデは磁場をもち、カリストは多数のクレーターが存在する。このうちエウロパは、太陽系で生命が存在する可能性がある天体の候補でもある。

 衛星と惑星の形成理論は類似している。木星は太陽が誕生してから数百万年のあいだに、塵やガスから構成される原始惑星系円盤から形成された。衛星もまた、惑星を覆う周惑星円盤から形成されたと考えられている。

 衛星の公転軌道が母惑星である木星の赤道面に沿うことは、かつて周惑星円盤から形成された名残だという。だが、周惑星円盤がどのように塵やガスを集積したかについてのメカニズムには、謎が残る。

■塵やガスのたまり場が形成

 研究グループは、木星の周惑星円盤を構成する塵やガスの物理的な相互作用を考慮した、新しいモデルによりこの謎を解こうとした。木星に向かう「引きずり」と外側に向けてガスを流出させる「引き込み」によって、周惑星円盤が塵やガスのたまり場となる。これにより「微衛星」と呼ばれる100キロメートル程の氷の天体が無数誕生し、数千年ののち衛星が形成されたという。これにより、イオ、エウロパ、ガニメデが順番に形成された。

 残るガリレオ衛星であるカリストは、太陽熱により周惑星円盤内のガスの大半は蒸発したため、形成に大幅な時間がかかった。ほかの氷衛星が6千~3万年で形成されたのに対し、カリストは最終的な大きさになるまで900万年かかった。そのためラプラス共鳴に加わらなかったという。

■進展する衛星理解

 太陽系外惑星の発見により惑星や衛星の理解が深まり、衛星形成理論は更なる進化を遂げたという。研究グループは現在、PDS70cと呼ばれる太陽系外惑星周辺の円盤を観測中である。また2024年には米航空宇宙局(NASA)エウロパ・クリッパー・ミッションを開始し、エウロパが生命の生存に適した環境かどうかが確認される予定だ。

 研究の詳細は、Astrophysical Journalにて18日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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