外国語を習得して集中力を高め、AIに負けない最強の脳をつくる!
2020年5月19日 07:46
外国語を習得するために最も重要なのは、継続して行うことだ。継続のためには強い動機付けが必要になる。帰宅が遅くても疲れていても毎日コツコツと学習を続けなければならない。「いつか仕事で使うかもしれない」「何か特技を持ちたい」といった動機付けでは効果が弱いかもしれない。
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外国語は習得したいけれど、それほど明確な動機付けはないという人に知って欲しいことがある。それは、複数の言語を使うという行為そのものが、脳を活性化させ、AIの時代に生き残れる最強の脳を育んでくれるということだ。
脳科学は日進月歩の勢いで進歩し、脳内の働きが可視化されていく中で、外国語学習が脳のどの部位を発達させるか解明が進んでいる。アメリカやヨーロッパで行われてきたいくつかの関連の調査結果をもとに、複数の言語を話すと脳のどの部位が発達してどんな効果が期待できるかを紹介する。
■多言語を話すと鍛えられる脳の部位と期待できる効果
●1.ACC(前帯状皮質)が発達して集中力と決断力が強化される
バイリンガルが1つの言語で話そうとしているとき、もう1つの言語を使おうとする衝動を ACC(前帯状皮質)が抑制している。
ACCは主に注意の制御を司り、関係ない情報を遮断して脳の活動の焦点を絞り込んでいる。前帯状皮質の活動が活発化すると、集中力が高まると考えられ、余分な情報が的確に遮断されるため決断力も強化される。
ACCは筋肉のように、鍛えると強く大きくなるといわれており、複数言語の使い分け体験を増やすことでますます強化されることが期待できる。
●2.海馬と大脳皮質が発達して記憶力が向上
スウェーデンのルンド大学で行われた研究によると、13カ月間、終日外国語以外の勉強をさせたグループと、ロシア語などの外国語を勉強させたグループでは、外国語を勉強したグループだけに、海馬と大脳皮質の発達が認められた。
海馬と大脳皮質は長期記憶を形成、想起、貯蔵する役割を担い、記憶や空間学習能力に関わる脳の器官である。外国語の学習が海馬と大脳皮質の発達を促し、記憶力や空間学習能力が強化された実験事例だ。
●3.前頭前野の実行機能が発達し、思考や行動を制御する認知能力が強化
米New York Timesの記事によると、バイリンガルであることが、脳の実行機能(Executive Function)の発達を促す可能性があるという。
実行機能とは、思考や行動を制御する認知システムを指し、前頭前野 (prefrontal cortex) に存在すると考えられている。実行機能が強化されると、新しい行動パターンの促進、そして、新しい行動パターンの最適化などがよりスムースに行えるという。
他にも、「複数の外国語を習得した人はアルツハイマー型認知症の発症を平均で4年半遅らせる」「言語を学ぶ過程で異文化理解が深まり、異なる価値観を知ることで脳が柔軟な思考をする」といった報告も聞かれる。
多言語を話すことで脳の複数の機能が鍛えられ、柔軟な発想や的確に決断する力が強化される。多言語を話すと、技術や価値観が目まぐるしく変化する時代を生き残れる最強の脳が育まれるのだ。(記事:薄井由・記事一覧を見る)