天の川銀河中心のブラックホールから「瞬き」を検出 慶應大など
2020年5月13日 16:42
天の川銀河の中心には「いて座A*」と呼ばれる電波天体が存在する。国立天文台は11日、いて座A*が放つ電波について、短周期で変動していることを発見したと発表した。
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■超大質量ブラックホールが作り出す電波天体
星の集まりである銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在すると考えられている。2019年には、M87銀河の中心に存在するとされるブラックホールの撮影に成功したが、ブラックホールを取り囲むように輝くのが電波天体だ。超大質量ブラックホールの周囲には「降着円盤」と呼ばれる塵やガスが存在し、摩擦により輝く。
われわれの住む天の川銀河の中心にも、太陽の約400万倍もの質量をもつブラックホールが存在するとされている。この超大質量ブラックホールに起因する電波天体が、いて座A*だ。いて座A*は、数時間のあいだに「フレア」と呼ばれる数倍の増光が確認されている。フレア現象を調べることで、いて座A*のメカニズムが明らかになり、ブラックホールの理解が深まるという。
■30分程度の短周期で瞬く
慶應義塾大学や国立天文台の研究者らから構成されるグループは、南米チリのアタカマ砂漠で運用中のアルマ望遠鏡を用いて、いて座A*を詳しく調査した。10日にわたって電波強度の変化を調べたところ、1時間以上かけてゆっくり変化しつつも、約30分という短い周期的な変動があることが確認された。
研究グループによると、30分という短い周期は、降着円盤の内側にあるブラックホール近傍の回転周期に相当するという。これは、降着円盤内に発生した熱いガスの集まりが回転することで、周期的に「瞬き」が確認されることを示唆する。
いて座A*もまた、M87中心のブラックホール同様、「イベント・ホライズン・テレスコープ」と呼ばれる地球に点在する電波望遠鏡群の撮影対象だ。だが、いて座A*の明るさや形状は刻々と変化するため、M87のようなブラックホールの撮像は容易ではないという。
研究グループは今後、いて座A*が放つ電波の強度変化を引き続き観測し、周囲にあるガスがブラックホールに吸い込まれる様子を描き出したいとしている。
研究の詳細は、米天文物理学誌Astrophysical Journal Lettersに2日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)