日本企業は沈まない! 開発者たちの熱い魂に学ぶ、これからの働き方

2020年5月10日 18:38

 新型コロナウイルスの影響によって、多くの業界で今、仕事や働き方の変革が求められている。

 国際通貨基金(IMF)が4月14日に発表した最新版の世界経済の見通しでは、2020年の世界経済の成長率は3.0%落ち込むと予測。マイナスに陥るのは実に11年ぶりで、1930年代の大恐慌以来、最悪の景気後退になるとの見方を示した。また、21年に入るとやや持ち直すと見てはいるものの、不確実性が非常に高く、予測より大幅に悪い結果になる可能性もあると警告している。

 1日千人単位で感染者が増えているような欧米諸国に比べると、日本での感染は今のところ小規模に留められているが、それでも油断は禁物だ。しかも、この状況は年単位に渡る可能性があるという見方もある。よしんば、新型コロナウイルス禍が予想以上に早く終結したとしても、世界中で大不況の嵐が吹き荒れることは避けられないだろう。そんな中で、揺るぎない経営を持続させていくためには、何が必要なのかを今一度考える必要がある。

 テレワークやオンラインミーティングなどの新しい働き方や、ITやIoT、AIなどの最新デジタル技術を導入したシステム的な改革も重要だが、それはあくまで手段であって、企業の根本を支えるものではない。近年は、根性論や精神論を軽視するような風潮も見られるが、それでもやはり、企業の根っこの部分を支えるのは、経営者や従業員の情熱ではないだろうか。

 例えば、日進月歩で目覚ましい発展を遂げている半導体業界の中でも、さらに革命的と言われている新技術を開発し、世界的な注目を集めている半導体メーカーのローム〈6963〉などは、技術に対する情熱を持っている良い例といえる。同社が開発した新技術は、「Nanoシリーズ」と名付けられている。具体的には、ハイブリッド車などの省電力化に貢献する「Nano Pulse Control」や、ウェアラブル機器などの超低消費電力化に貢献する「Nano Energy」である。

 「Nanoシリーズ」をめぐる技術開発の経緯と開発者が注いだ情熱は、元半導体エンジニアという異色の経歴を持つマンガ家、見ル野栄司氏が、代表作でもある「シブすぎ技術に男泣き!」をもじった漫画「ロームに男泣き!」を同社サイトで連載しており、その中で詳しく、且つ面白くレポートしている。技術の解説もさることながら、ロームの開発者が自身の功績に驕ることなく、上司に恵まれたからと語っている場面など、異業種や異分野でも学べるところは多く、一見の価値がある。

 また、広島県福山市の本社を中心にアメリカやタイ、台湾、中国、韓国に拠点を持ち、金属工作機械の製造販売をグローバルに展開している株式会社シギヤ精機製作所も情熱にあふれる企業だ。

 1/1000ミリの加工精度を要求される円筒研削盤など、自動車やあらゆる電気機器の製造において欠かせない技術だが、消費者の目に触れることは皆無だ。しかも、同社が作る機器のほとんどがメーカーからのオーダーメイド。同社でも当然、IT化は進められているが、顧客の要望を細かく適えるためには機械任せにすることはできない。そこで同社の技術部では、昼食後にミーティングを実施して、仕事の進捗や課題を共有したり相談できるような環境を整え、一丸となって取り組んでいるという。

 普段、一般の消費者の目に見えないところでも弛みなく努力を続け、情熱を燃やし続けるこういった姿勢が、日本企業の最大の強みであり、製造業だけに限らず、これから最も必要とされてるものではないだろうか。

 止まない雨はない。新型コロナウイルス禍も、いつかは終息するときがくるだろう。その時に日本を、そして世界を復活させるのは、ITやAIではなく、苦境にもめげないビジネスマンの熱き魂だと信じたい。(編集担当:藤原伊織)

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