東芝の量子暗号通信に期待! ハッキング不可能なトランザクションの実現近し

2020年5月4日 08:02

 主力であった半導体メモリー事業の売却にまで追い込まれた東芝が、会社の存続をかけて研究を進めてきたプロジェクトが、いよいよリリース目前にまで迫っているようだ。そのプロジェクトとは、量子暗号通信に実装される暗号キーだ。日経新聞が、年内サービス化の見通しを報じている。仮想通貨をはじめとするデジタル・トランザクションの情報漏洩・ハッキングを理論上不可能とする、次世代型セキュリティ技術である。

【こちらも】東芝、 AI技術者2000人体制へ 東大と協力し教育プログラム作成

 東芝は30年前から、いち早く量子暗号通信の基礎研究に取り掛かってきた。2000年に単一光子検出器を完成させ、これによって量子暗号キーをビット転送する単一光子が確認可能となった。ハッキングなど第三者がアクセスを試みれば、その瞬間に光子は変形して元に再現できない。つまり不正アクセスは即座に察知され、ユーザーは直ちに暗号キーを変更して不正アクセスを回避できるシステムなのだ。

 なお、東芝は暗号キーのビット送信の距離とスピードにおいて、これまで世界記録を更新し続けきた実績を持つことから、量子暗号通信キーの実用化の最有力候補とも目されている。

 昨年には、米Googleが53量子ビットのプロセッサ・シカモアを搭載した、量子コンピュータの能力実証に成功したと報告した。このコンピュータの演算能力は、世界最速スーパーコンピュータ・サミットが1万年かけて処理するものを、わすが200秒ほどで計算してしまうというから驚きだ。

 高度な素因数分解アルゴリズムを実装した暗号通貨のトランザクションだが、ECC(楕円曲線暗号)をベースにしたプライベートキーで守られている。だが量子コンピュータを使えば、ショアのアルゴリズムによってECCでさえもやすやすと解読し、かつ暗号を自由に書き換えてしまうだろうと研究者等は述べている。

 今後、量子コンピュータの出現で世界の通信インフラが大きな進歩を遂げるとされている。10年前には50年かかるとされていた量子コンピュータ技術だったが、昨年Googleが量子コンピュータ実現への一歩を達成した。

 急速に発展を遂げる量子通信市場は、その期待から2025年には5000億円規模に成長すると目されている。コロナウイルス問題で多少の遅れは否めないが、確実にブームマーケットとして注目されるはずだ。そうなれば、東芝が手掛ける量子暗号通信と暗号キーは通信インフラの要となりシェア拡大は必至だろう。

 これまで瀕死の苦難を耐えてきた東芝にとって、このプロジェクトは起死回生の一打である。なお、世界IT市場の注目度からすれば投資価値は十分にありそうだ。東芝の株価は過去10年間の底値付近にあり、トリプルボトムの逆三尊で買いシグナルが点滅し始めている点にも注目したい。(記事:TO・記事一覧を見る

関連記事

最新記事