超大質量ブラックホール周辺をダンスする星 一般相対性理論の確証に

2020年4月23日 16:34

 ドイツの物理学者アルベルト・アインシュタインが20世紀初頭に考案した一般相対性理論。複数の観測事実がこの理論の確証となるが、新たな証拠が加わった。ヨーロッパ南天天文台が、超大質量ブラックホール周辺をダンスする星を捉えている。

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■約30年にわたる観測の成果

 太陽から約2万6,000光年彼方のいて座A*は、天の川銀河の中心にある電波を放つ天体だ。いて座A*には、太陽の約400万倍の質量をもつブラックホールが存在すると考えられている。

 このような超大質量ブラックホールは、一般相対性理論の検証に貢献する。ドイツのマックス・プランク研究所は約30年にわたり、いて座A*にある恒星S2の観測を続けている。今回、S2がリボンを結ぶように運動することが、ヨーロッパ南天天文台の運営する超大型望遠鏡VLTによって判明した。ブラックホールまで200億キロメートル程離れた付近をS2がダンスを踊るかのように軌道を描き、1周するのにかかる時間は約16年だという。

■星のダンス運動を説明する一般相対性理論

 ニュートンの古典力学によると楕円形の軌道を描くはずだが、S2はロゼットのような模様を描いていた。S2の奇妙な軌跡は超大質量ブラックホールの強力な重力による時空の歪みが生み出したものであり、一般相対性理論を確証する証拠となっている。

 一般相対性理論が述べる重力による時空の歪みを確認できるケースは、天体観測技術が現在ほど発達していない20世紀前半では数が限られていた。「近日点」と呼ばれる、水星が太陽にもっとも近づく地点の移動が、一般相対性理論を確証する最初の証拠だ。

 一般相対性理論の帰結であるブラックホールもまた検証するための格好の天体だ。重力崩壊により誕生したとされるブラックホールは、光や物質を吸収する天体として知られている。超大質量ブラックホール付近から放たれた電磁波は重力によって波長が伸び、地上では赤外線として検出される。VLTには赤外線を観測できる最新鋭の装置が搭載されており、今回S2の奇妙な軌道が明らかになった。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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