見えない敵・新型コロナウイルスとの”静かな戦争” (2) 戦闘装備が足りない!
2020年4月22日 17:53
巷ではマスクや消毒液の不足が喧伝されている。足元を見て転売で稼ぐ輩(やから)が出現した為、ネット上では販売規制も実施されている。マスコミで「マスク増産」報道がされる割には、近所のドラックストアにマスクが並ぶことはなく、マスク難民が多数出現している。
【前回は】見えない敵・新型コロナウイルスとの”静かな戦争” (1) 局地で進む医療崩壊
一般市民にとってもマスクが手に入らないことは問題だが、医療従事者にとっては切実な問題になっている。「(1)局地で進む医療崩壊」でも記載したように、医療従事者にはアイシールド付きのサージカルマスク、ガウン、手袋を着用した上で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を診察する指針がある。
話題のPCR検査とは鼻咽頭に綿棒を入れて、鼻の奥をぬぐった粘液を検査することが多い。鼻の奥はデリケートな領域であり、綿棒でぬぐうという行為はほとんどの人にとって初めての経験だ。結果として”くしゃみ”をしてしまう人が多い。
くしゃみをすると唾液とともにCOVID-19のウイルスが周囲に飛散する。飛散する唾液を受け止めた医療従事者がそのまま次の患者に接すると、その患者がCOVID-19に感染する恐れがあるため、着用していたアイシールド付きのサージカルマスク、ガウン、手袋は廃棄して、未使用のものに着替えるのが基本だ。着替えには10分程度の時間を要するようだ。
COVID-19と戦う際に必要な戦闘装備とも言えるアイシールド、サージカルマスク、ガウン、手袋が不足している。クリアファイルを工夫してアイシールドにしている例を目にしたが、4点セットはどれも欠かせない必須アイテムなので、現場の工夫には限度がある。このままでは、4点セットを揃えられないことが医療崩壊につながる懸念すら感じられる。
4月初旬の時点で東京都には約170万着の化学防護服の備蓄があり、当面の需要には問題ないようだが、今後の動向次第では不足が懸念される。
現に今年の2月上旬に約9万枚を在庫していた大阪府では14日時点で残り数千枚の状況だ。今のままでは近日中に在庫が払底することが目に見えているため、大阪市の松井一郎市長が「既に防護服の代わりにゴミ袋をかぶって治療している医療機関が出てきた。未使用の雨がっぱがあればぜひ融通して欲しい」と医療機関の窮状を訴えた。
飛沫感染や接触感染を防止するためには、特殊な不織布で全身を覆う化学防護服が欠かせない。ところが不織布が特殊で供給先が限られるうえ、加工賃が割高な日本には縫製拠点がほとんどないため、輸入に頼ってきた。全世界で一気に需要が増大した商品を、優先的に輸入することは非常に困難である。
最前線でCOVID-19と戦っている医療従事者の纏う戦闘装備がゴミ袋や雨がっぱで良いわけがない。もはや政治の力で国内生産を進めなければ、大規模な医療崩壊が現実になる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)