三次元組織に血管を作る技術開発 iPS細胞による人工臓器等へ応用 産総研
2020年4月16日 12:21
産業技術総合研究所は14日、独自に開発した組織培養デバイスを使い、ミニ臓器等の三次元組織に主血管や毛細血管を作成する技術を開発したと発表した。研究グループでは、創薬や再生医療分野に大きく貢献できるのではないかと期待している。
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■三次元組織とは?
三次元組織とは、従来ある培養皿を用いて細胞を平面的に培養した組織に対して、特殊な組織培養デバイスを使い細胞を立体的に培養した組織をいう。
三次元組織の代表例としては、ミニ臓器がよくしられている。ミニ臓器については、横浜市立大学等の研究グループが、2017年にiPS細胞から極小サイズのミニ肝臓を大量に作成することに成功している。
このような三次元組織は、創薬や再生医療分野でその応用が期待されているが、問題点も多く残されている。その1つが、三次元組織内に動脈等の大きな主血管や毛細血管を作成することが難しいという点だ。そのため、臓器や組織と置き換えるための大きく分厚い三次元組織に酸素や栄養を効率的に供給したり、医薬品開発やがん研究のために三次元組織内に薬剤を流し込むことは難しかった。
今回の研究成果は、このような問題点を解決するものだ。
■三次元組織内に主血管と毛細血管を作成することに成功
研究グループは、実質細胞(臓器の機能を担う細胞)、血管内皮細胞(血管を形成する細胞)、間葉系幹細胞(血管の形成を助ける細胞)をコラーゲンと混ぜ合わせ、予めニードルを仕込んだ組織培養デバイス内で培養。三次元組織が形成された後に、このニードルを引き抜いた。
このときに三次元組織内にできたトンネルに血管内皮細胞を流し込み培養することで、主血管の作成に成功。さらにその後、その主血管に培養液を流し、培養を継続することで毛細血管の作成にも成功した。
研究グループによると、培養液から酸素や栄養が供給されたり、培養液の流れによって物理的に刺激されたりすることによって、血管内皮細胞が活性化され、毛細血管が形成されると考えられるという。
研究グループでは、このようにして作成した三次元組織について、実際に臓器の機能を担うたんぱく質の発現を確認すると共に、薬剤の代謝の測定にも成功している。
今後は、より大きな組織(臓器)の作製や抗がん剤の評価、iPS細胞等を使ったさまざまな臓器や組織の作成への応用等研究を進めていく方針だ。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)