【小倉正男の経済コラム】新型コロナウイルス感染症:収束を誤れば「大恐慌クラスの不況」

2020年4月13日 14:00

■早くて的確だった台湾の情報収集・分析力

 台湾では、無観客だがプロ野球が開幕したと報道されている。台湾は新型コロナウイルスへの対応で成功したといわれている。蔡英文政権の手際は世界から評価されている。

 これは日本も少しは学んでほしいものだ。現状は、政権の能力格差が露呈してしまっている。    第一に情報収集力である。台湾は、昨年12月末に「中国・武漢で特殊な肺炎が発生し、隔離治療を受けている」とWHO(世界保健機関)に警戒を呼びかけていたことを明らかにしている。    情報が早いのはもちろんだがWHOに警戒を呼びかけていたのは、その重要性を認識していたわけで、分析力も高かったということになる。先手を打って感染拡大に防止策を行ったわけである。  

■日本の安全保障(インテリジェンス)の痛恨

   翻って日本の情報力、その分析力だが残念だが、あまりにも問題があったというしかない。    日本にも1~2月には一般の企業ベースで、「上海の工場を9月に移転するのだが、経済が停止しており、その確定ができないでいる」と困惑しているなどの情報があった。  その工場は医薬品の包装に関するもので、旧工場から新工場に移転するという話である。同じ上海地区での移転だが、それが確定できないという困惑だった。    日本にも情報は入っていたわけだが、“対岸の火事”と誤認したのか、取り組みが甘かった。情報収集、そして分析を誤ってしまった。  どんな事案でもそうだが危機管理では、火の手が広がってからでは解決が一層困難になる。危機時には「初期消火」が第一の要件だが、その最も重要な時期に何もできなかった。    日本の安全保障(インテリジェンス)という点からみれば、痛恨である。このエラーを今後に生かせるのかどうか。何故、このようになったのか、大きな反省材料にほかならない。

■長引けば長引くほど日本経済は地獄を見る

 新型コロナウイルスへの現時点の対応も問題が少なくない。「2枚の布マスク」配布とは、よくできた「コント」か、と。阿倍晋三首相の周辺が、「マスクを配れば国民の不安がパッと消えます」と進言したとか報道されている。その費用は466億円というのだから「炎上」を招いている。    収入が減少した世帯に対する30万円給付も条件や基準が曖昧であり、給付世帯が限定されている。国民の多くもこれには失望している。政府の認識とはその程度のものか。このぐらいのことしかできないのか。野党どころか、自民党内若手議員から異論が出る始末だ。    あまりの悪評に慌てて政府筋も「これはいま困っている層への緊急措置で第一弾、追加の第二弾の給付を検討している」と追加策を表明している。    問題は、緊急事態宣言が不可解なほど遅れてしまったことだ。新型コロナウイルスの収束がなかなか見えない。長引けば長引くほど企業は売り上げが減少し、キャッシュが入ってこない事態に追い込まれる。    「大恐慌クラスの不況」と言われ始めている。確かに、大企業から中小企業、個人商店まで停止状態が長引けば資金繰りに困る事態になる。  緊急事態宣言、あるいは都市封鎖でもやれることは何でもやって感染爆発=医療崩壊を避けなければならない。新型コロナウイルスの収束を誤れば、日本経済は地獄を見ることになる。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシス・マネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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