医療用サージカルマスクがパンデミック防止に効果か 米大学の研究

2020年4月10日 08:01

 風邪や季節性インフルエンザなどによる咳に対するエチケットとして厚生労働省が推奨するなど、日本ではマスクの着用が慣習的に行われている。だが海外ではマスクの着用は一般的とはいえない。アメリカでは小売店で従業員にマスク着用を拒否するなど、マスクへの疑義も根強いという。米メリーランド大学は7日、新型コロナウイルスなどから人々の感染を防ぐのに、医療用サージカルマスクが役立つという研究を報告している。

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■拡散を防止する医療用サージカルマスク

 米メリーランド大学の研究グループは、新型コロナウイルスによるパンデミックが発生する前、医療用サージカルマスクの効果を香港大学の研究者らとともに確認している。呼吸器症候群の感染者246名を対象に、医療用サージカルマスクの着用でどの程度ウイルスを拡散させるかを比較した。

 その結果、医療用サージカルマスクが、空気中の季節性コロナウイルスやインフルエンザウイルスの量を有意に減少させていることが、実験室中で確認された。

 新型コロナウイルスは季節性コロナウイルスに近く、粒子の大きさも似ていることから、その拡散防止に医療用サージカルマスクが有効な可能性があるという。研究グループはホワイトハウス職員とも研究成果について議論し、医療用サージカルマスクが医療現場以外での感染予防に役立たないという意見を再考中だ。

 ただし、医療用サージカルマスク着用がライノウイルスの量を有意に減らさないことも確認されている。また無症状の新型コロナウイルスの感染者もいることから、医療用サージカルマスクの着用が新型コロナウイルスの感染予防になるかについては言及していないと、研究グループは釘を刺している。

 今回の成果はコントロールされた状況下で得られたものだ。現実世界で医療用サージカルマスクが季節性コロナウイルスやインフルエンザの拡散を防止するかについては、示されていない。だが少しでも新型コロナウイルスの拡散を防止するならば医療用サージカルマスクを着用する価値はあると、研究グループのひとりであるメリーランド大学のDon Milton教授は述べている。

■日米間における医療用サージカルマスクの位置づけの違い

 医療用サージカルマスクの目的は感染の予防であり、体液が空気中に飛散することをろ過する効果がある。だがSARSウイルスなど0.1マイクロメートル以下の粒子に対し、医療用サージカルマスクは対応できないという資料を厚生労働省は公開している。

 日本では医療用サージカルマスクの性能に関する法的な規定はない。しかしアメリカでは、米食品医薬品局(FDA)が登録制度を実施しており、性能評価の試験も規定している。

 研究の詳細は、国際学術誌Nature Medicineにて7日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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