タイヤの重要性
2020年4月9日 11:47
●大御所ポールフレール氏
車の総合性能判断に際して、タイヤが重要な要因である事を、改めて印象付けられたのは、ポールフレール氏によるものが極めて大きい。
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ポールフレール氏(Paul Frère, 1917年1月30日― 2008年2月23日)は、1960年のル・マン24時間レースにフェラーリ250GTRで優勝した経験もあり、当時は国際自動車ジャーナリスト協会の会長だった。
●自動車試験場での新型車評価
新型ラグジュアリースポーツ車の市場投入直後に、ポールフレール氏を自動車試験場に案内して、高速周回路はもとより、各種テストグラウンドで試乗してもらった。
参考写真: 新型ラグジュアリースポーツ車
試乗後のコメントでは、その年のカーオブザイヤーを獲得したその新型車の、操縦性に関する部分で、意訳すれば「ちょこまかした」みたいなニュアンスのコメントがあって少々ひっかかった記憶がある。
それというのも、このイベントに先立って、自動車評論家、専門誌ジャーナリストを対象とした試乗会では高評価を得ていたからだ。
今にして思えば、彼は新型車のサスペンションと、標準装備のホィール径、リム幅、タイヤのコンパウンド等の総合的なマッチングに、微妙な違和感を感じら取られたのだろうか。
●鈴鹿サーキットで
自動車試験場での試乗後、京都に移動し、翌日には鈴鹿サーキットで、マーチ(注)のシャシに新しいレース用エンジンを搭載した、開発中のレーシングカーの試乗をして、評価してもらった。
(注):マーチ・エンジニアリング (March Engineering)。イギリスのレーシングカーメーカー。
直前に準備したばかりの新レース用エンジンは、マーチのシャシにマウンティングしただけで、細かなセッティング、調整も何もしないままに鈴鹿に持ち込んだもので、ポールフレール氏からは右旋回時と左旋回時で一方はオーバーステア、もう一方はアンダーステアが出ているといった指摘や、細々としたいろいろなアドバイスもあった。
●タイヤとホィールを変更した新型車
その際に、メーカー契約のレーシングドライバーK氏も、おろしたばかりのメーカー貸与車である新型車で鈴鹿入りしていた。
K氏の新型車は、車本体には一切手を加えず、タイヤとホィールだけを変更してあった。それを目ざとく見つけたポールフレール氏は、K氏に了解を得て、サーキットに乗り入れた。
何周か走行後に、パドックに戻ったポールフレール氏は、「先の自動車試験場でのコメントを訂正したい。タイヤの選定をしっかりやれば、新型車の操縦性は基本的には非常に優れている」と話された。
K氏も、ポールフレール氏の見事な走りを見て感心していたが、帰って来た貸与車をチェックして、「コーナーを相当攻めたみたいだから、タイヤがショルダー部分まで摩耗した」とこぼしていた。
●タイヤ選定には気を使うべき
筆者自身、10数台の車を乗り継ぎ、結構な距離を走行している。
若い頃は、東京から神戸の実家まで走って帰り、少し休憩して友達と姫路まで走った事もあり、リタイヤした現在も、月1000kmは走行する。
当時、鈴鹿耐久レースは、1000kmは複数ドライバーが必要だが、「500kmまでは単独エントリー出来るのだから当然」みたいな事をいっていた。
新車でライン装着されて納車されたタイヤの交換に際しては、保有する車の特性を勘案し、タイヤメーカーの公表する特性を勘案して、タイヤ選定をする様に心掛けている。
タイヤは命を乗せている。
個人的には、間違っても近隣国生産の、価格だけが取り柄の輸入タイヤに手を出すのは避けたいと思っている。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)