電磁波推進ロケットへの給電効率測定に成功 超低コスト宇宙開発へ一歩 筑波大
2020年4月6日 07:02
筑波大学は3日、電磁波の1種であるマイクロ波を用いて推進するロケットへの、マイクロ波による給電効率等の測定に成功したと発表した。研究グループでは、この研究成果は、効率的な電磁波推進ロケットの設計等に大きなインパクトを与え、超低コストでの宇宙開発に向かって1歩前進するものであると考えている。
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■電磁波推進ロケットとは?
まず、ロケットがマイクロ波によってどのようにして推進するのかから説明したい。
地上施設からロケットに送られてきたマイクロ波は、集光器と呼ばれる鏡によって1点に集められる。すると、その1点に大きなエネルギーが集中することになり、大気がプラズマ化して爆発する。この爆発によって推進力が発生するというわけだ。ちなみにマイクロ波は家庭用電子レンジでも使われている。
このような電磁波推進ロケットは、化学的な液体・固体燃料がほぼ不要だ。そのため、電気代はかかるものの燃料費はかからず、しかもロケット自体を大幅に小型化できることから、その打ち上げコストは従来のロケットに比べ、1/100程度ですむと考えられている。
電磁波推進ロケットの研究開発は、2001年頃から本格的に始まり、2003年には東京大学の研究グループが10gの重量を2m打ち上げることに世界で初めて成功している。
とはいえ、電磁波推進ロケットにはまだまだ多くの課題が残されている。例えば、これまで大電力マイクロ波を瞬時に測定する方法がなく、効率的な電磁波推進ロケットの設計等に欠かせない、地上施設から電磁波推進ロケットへのマイクロ波による給電効率等は推定に頼るしかなかった。
今回の研究グループの研究成果は、この課題を解決するものだ。
■独自に開発したレクテナ回路を使いロケット内の大電力マイクロ波測定に成功
研究グループは、独自に開発したレクテナ回路(マイクロ波等電磁波を直流電流に変換する回路)を用いて、ロケット内の大電力マイクロ波の測定に成功した。
そこで、研究グループが実際に給電効率の測定を試みたところ、28GHzのマイクロ波を250kWの出力で90cmの距離から送った場合、ロケットとマイクロ波発生装置の間の給電効率は14%、コンセントからロケットまでの全体での給電効率は約6%となった。
研究グループでは、今回の研究成果によって、電磁波推進ロケット等の設計概念が大きく変わる可能性があるとしている。
今後は、実際の打ち上げでは刻々と位置や姿勢が変化する電磁波推進ロケットに、マイクロ波によって効率的に給電する方法等の研究を進めていく方針だ。
この分野では、現在、我が国が世界をリードしている。これからの研究の進展に期待したい。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)