世界の車載LEDランプ市場を大きく加速させる、日本企業の技術力

2020年4月5日 17:15

自動運転、電装化など、自動車の技術は、急速に進化している。従来からある車載アプリケーションにおいても、技術革新は目を見張るものがあり、その代表的なものとして車載ランプのLED化があげられる。

 車載ランプをLED化する最大のメリットは省電力だ。さらに、これまでのハロゲンランプに比べて長寿命で高密度実装が可能な点も大きい。多彩なデザインと高機能化、省電力を実現できるLEDランプの存在は、今後の自動車の技術を発展させていくには欠かせないものだ。

 

 世界80ヶ国で500件以上の技術について調査を行っているTechNavio(代理店:グローバルインフォメーション)がまとめた「世界の自動車用LEDヘッドランプ市場:用途、地域別 – 予測および分析(2020年~2024年)」によると、世界の自動車用LEDヘッドランプ市場は、予測期間中に14%のCAGRで成長する見通しで、2024年には23億6000万米ドルに達すると予測されている。

 日本では昨年7月、ダイハツ工業が軽自動車として初めて、「ADB(アダプティブドライビングビーム)」とも呼ばれる多機能型LEDヘッドランプを、新型「タント」のカスタムモデルで採用した。対向車が来た際に、ハイビームとロービームを自動で切り替えるオートハイビームなど、様々な機能を持つADBだが、これまでコスト面の課題から軽自動車では採用が難しいといわれていた。しかし、ダイハツの構想を基に小糸製作所〈7276〉が開発に取り組み、構造や構成部品を見直すことによって大幅なコスト軽減に成功。今後は、軽自動車にもADBなど、最新のLEDランプ技術が採用されていく動きが加速していくと思われる。

 これらヘッドランプのみならず、リアランプにおいても、デザイン性、高機能化に加えてメンテナンス性を重視する要求が高まっている。そこで、LED電球のように容易に付け替えでき、メンテナンス性に優れるソケット型LEDランプが登場し、すでに現行の大衆車でもトレンドになりつつある。

 そんな中、電子部品の総合メーカーであるローム株式会社〈6963〉が、ソケット型LEDランプ向けリニアLEDドライバICの開発に成功したと発表した。これまでLEDリアランプにおいては、車載バッテリーの電圧が低下した際、消灯もしくは明滅してしまい、安全性が著しく損なわれてしまうという課題があった。これを防ぐためには、コンパレータやトランジスタなどで外付け回路を構成しなければならないため、小型化が難しく、デザインの自由度も犠牲にしなくてはならなかった。しかし、同社のLEDドライバIC「BD18336NUF-M」は、新たに搭載された「減電時電流バイパス機能」によって、バッテリー電圧が低下した場合でも、LED電流経路を切り替えることで、消灯を防ぐことができる。さらに、小型化にも成功したこの製品は、超小型のソケット型LEDランプで求められる10mm角基板への実装も可能であり、デザインの自由度も高める。なお、この製品は、リアランプ以外に、欧州などで採用が進む、白色のDRL(デイタイム ランニング ライト)にも適用できるという。

 小糸製作所にしてもロームにしても、目まぐるしい進歩の中にあっても決して揺らぐことなく、これまでに培ってきた技術を応用して、立ちはだかる課題を一つ一つ、着実に解決していく。そんな日本のモノづくりの姿勢の真骨頂が、小さな車載LEDランプの一つ一つに込められているのだ。(編集担当:藤原伊織)

関連記事

最新記事