マンガンとチタンからなる高性能リチウム電池正極材を開発 横浜国大
2020年3月30日 07:30
現在電気自動車や蓄電デバイスに用いられているリチウムイオン電池は、コバルトやニッケルなどを電極材料として含有することが多い。上記のレアメタル元素は資源枯渇が懸念されているため、資源が豊富な元素からなる電極材料の開発が望まれてきた。そのような問題へのアプローチとして、横浜国立大学の研究グループは27日、マンガンとチタンから構成される新規電極材料を開発したと発表した。
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マンガン・チタン系の材料がコバルト・ニッケル系従来材料よりも高い容量を示すことは、従来の研究でも明らかにされていた。そのため、上記のような資源的な問題に加えて放電容量やエネルギー密度の観点からも注目されていた材料であった。
しかし、マンガン・チタン系材料は50度以上でないと十分にその容量を発揮できず、出力が出にくいという課題を抱えていた。また、サイクル寿命が短いという決定的な問題も有していた。
そこで研究グループは材料をナノサイズ化し、粒子中の粒界濃度を増加させるというアプローチを行った。材料をナノサイズ化することで電解液との接触面積が増加し、リチウムイオンの移動がより容易になる。そのため、充放電反応がスムーズに起こりやすくなり室温でも十分な容量が出せるようになったのである。また、サイクル寿命も従来と比較して大幅に向上する結果となった。
今回の研究では「メカニカルミリング法」と呼ばれる方法により、ナノサイズの材料を得ることに成功した。この手法は、材料を容器内でセラミックスボールと共に回転させることで混合・粉砕を行うものである。
研究グループが高性能なマンガン・チタン系電極材料の開発に成功したことで、資源枯渇の問題が解決する可能性が広がった。マンガンやチタンは資源が豊富な元素であるという点が、大きな利点となり得る。従来のコバルト・ニッケル系材料を代替することができれば、コストも下がるためより電気自動車が普及することも期待される。
本研究の成果は25日付のMaterial Today誌のオンライン版にて掲載されている。