炭素の紐で宇宙のゴミを除去 JAXAと人工流れ星ベンチャー企業が提携

2020年3月28日 17:26

 宇宙空間には、「宇宙デブリ」と呼ばれるゴミが浮遊しており、総量は1億個にも及ぶが、それと宇宙船との衝突リスクが懸念されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、宇宙ベンチャーのALE(東京都港区)と、宇宙デブリ対策の実証を開始すると発表した。

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■宇宙デブリ対策

 宇宙デブリを取り除くには、人工衛星を用いる方法や地上からレーザーを照射する方法等が検討されている。人工衛星を活用する方法は、軌道上の宇宙デブリを取り除く能動的除去(ADR)と、人工衛星のミッション終了後に軌道から離脱させる受動的除去(PDR)に大別される。

 JAXAは宇宙デブリ対策に取り組んでおり、ADR実現に向けて民間企業等と事業化について連携し、共同実証を目指している。JAXAが今回ALEと共同実証を実施するのは、宇宙デブリの拡散を防止する装置だ。鋼の数十倍もの硬度をもち、宇宙エレベーターのワイヤーの材料としても期待されるカーボンナノチューブが装置に用いられる。

 装置の仕組みは、カーボンナノチューブ製の紐を宇宙空間上で展開させ、地球の磁場によりミッションが終了した人工衛星の軌道を変更させるものだ。これにより軌道高度の降下が実現し、大気に再突入できるようになる。カーボンナノチューブが宇宙デブリ除去に用いられるのは、今回が世界で初めてという。

■提携する人工流れ星ベンチャー

 JAXAは、民間企業等とともに宇宙関連事業の創出を目指すJ-SPARCプログラムを実施しており、その一環として宇宙デブリ除去の事業化で連携したのが、宇宙ベンチャーのALEだ。

 ALEは世界で初めて人工衛星を使った人工流れ星の再現に取り組んでいる。人工衛星から塵や粒を放出し、大気中でプラズマ発光させることで、人工流れ星が再現されるという。2019年には、人工流れ星用の衛星2機の打ち上げに成功しており、現在軌道上で運用中だ。ALEの豊富な研究実績をもとに、宇宙デブリ除去事業の早期実現も期待される。

 JAXAによると、2021年度内に超小型衛星に宇宙デブリ除去装置を搭載して実証を実施した後、装置の製造や販売を事業化する予定だという。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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