ソフトバンクGの葛藤、孫社長が中国アリババ株の一部売却を決断か?

2020年3月25日 07:43

 ソフトバンクグループ(SBG)が23日、保有資産のうち最大4兆5000億円を売却、調達した資金のうち2兆5000億円は負債の返済や現金預金残高の上積み財源とし、残りの2兆円は自社株買いなどに充当すると発表した。

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 13日に発表された5000億円の自社株買いと合わせて、最大で計2兆5000億円の自社株買いが行われる模様だ。自社株買いの規模は、米アクティビスト(物言う株主)のエリオット・マネジメントの要求をクリアすることになる。SBGの時価総額は19日時点で約6兆円であり、発行済み株式数の40%強を取得して消却するようだ。

 売却対象となる株式の銘柄は公表されていないが、資産価値で13兆4000億円のアリババ集団か、同4兆7000億円のソフトバンク(SB)に絞られ、2月25日に国内外の16金融機関から協調融資で5000億円を調達した際に、最大9億5300万株のSB株が提供されていることを勘案すると、対象銘柄がアリババであると考えて無理はない。

 アリババの株価は直近最高値を示した1月13日の約230ドルから、新型コロナウイルスによる市場の混乱や、SBGの資産売却報道を受けて180ドルを割り込む状況にあり、20%近い資産価値の縮小が起きている。

 市場が低迷している最中の今後、四半期毎に1兆円を超えるアリババ株が市場に供給されると、アリババ株自体の軟調傾向に拍車がかかることも想定される。2月12日現在で、16兆1000億円と見積もられていたアリババの資産価値は、23日には13兆4000億円に減少。市場での消化が進むと、13兆4000億円-4兆5000億円=8兆9000億円では収まらない筈だ。

 SBGは単体で現在2兆円程の手元資金を保有していると言われるが、20年6月の1000億円から始まる社債の償還は、21年度までの分を合計すると1兆4500億円に及ぶ。

 ソフトバンク・ヴィジョン・ファンド(SVF)への出資を受けている、サウジの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)に対しては、運用益の配当とは別に、運用実績に拘わらず年利7%相当分を支払うという破格の契約を結んでいる。

 しかしSVFは、投資先の株式を市場で売却しなければキャッシュフローを生み出すことは出来ないが、保有株式は新規株式公開を前提とした新興企業であり、おいそれと現金化することは出来ない。4000億円弱と思われる確定利息はSBGが支援する必要も考えられる。そうなると、SBGの手元資金2兆円はおよそ1年間の運転資金としてギリギリということになるのだ。

 このまま資金繰りが進行すると、2月25日にSB株を担保に調達した5000億円の返済原資は出てこない。短期借入金として1年以内の返済が必要な5000億円を返済するために、虎の子のアリババ株を売却する決断を孫正義社長はしたのだろうか。

 23日、資産売却報道があってストップ高に張り付いたSBGの株式は、24日には同様の騰勢が続いたものの前日の再現はならずに3791円(ストップ高3887円)で終了した。いまいち乗り切れないモヤモヤがあったのか、単なる小休止なのか、今後の推移が注目される。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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