乃木坂46『しあわせの保護色』に込められたメッセージ
2020年3月24日 16:35
「餞(はなむけ)」という言葉の語源は、旅立つ友人の無事と成功を祈って、自分が乗っている馬の鼻を友人の旅立つ方向に向けるという儀式(挨拶)からだと言う。
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3月25日に発売される乃木坂46の25枚目シングル『しあわせの保護色』は、そういう意味では、まさにこのシングルを持って卒業する白石麻衣、井上小百合、そして2期生佐々木琴子にとっての「はなむけ」にふさわしい作品になったと言えるだろう。
それぐらい、このシングルは内容の濃い、重厚感とポップさを兼ね備えた充実した1枚となっている。
表題曲『しあわせの保護色』は、白石の旅立ちを笑顔と寂寞の想いで受け止めるメンバーの暖かさをわかり易いダンスで表現した楽曲だ。どこか懐かしさを感じるメロディが印象に残るもので、PVも鮮やかな色彩で華やかさを強調した美しい映像になっている。
白石麻衣の涙目の笑顔に、心を撃ちぬかれる人も多かっただろう。
しかし、今回のシングルで最大の特徴は、表題曲以外の楽曲が、それこそすべて表題曲レベルの魅力を持ち、実際、先行公開されたMVの再生回数もカップリング曲とは思えないほどの数字をたたき出しているところだろう。
このシングルではこれまでのように「アンダー楽曲」がない。
その代わりに、2期、3期、4期と期生別の楽曲が揃っているのだが、これが素晴らしいのだ。
2期生楽曲『アナスターシャ』は、24日現在150万PVを誇っているが、ほぼ名誉2期生ではないかと言われている伊藤衆人監督渾身のMVが、あまりにも美しすぎる仕上がりだ。これまでどちらかと言えば変化球が多かった2期生曲の中、まさに王道の剛速球を投げ込まれたような衝撃を受け、さらにちりばめらたこれまでの2期生にまつわるエピソードを考察する人たちも後を絶たない。
3期生楽曲『毎日がBrand new day』では、3期の歌姫として早くから注目されてきた久保史緒里を満を持してセンターに送り込んできた。キャンプファイヤーを囲んで楽し気に歌い踊る3期生の魅力がじわじわと沁み込んでくるような穏やかな曲だ。
そして、なんと200万PVに届こうかというほど再生回数を上げているのが、4期生楽曲『I see…』だ。公開直後から「SMAP感」というキーワードがTwitterの上位を占めるほど話題になっている。
90年代のSMAP、あるいはブラックビスケッツを彷彿とさせるテンポ感のある、スピーディーな曲だ。SMAPファンからも好意的に捉えられ、乃木坂ファンとの間でコメントの交流がみられるなど、暗いご時勢を吹き飛ばせるような空気を醸し出している。
『歴史』と『充実感』と『未来への希望』を、表題曲レベルでぶち込んできた今回のシングルは、卒業生を送り出すのにふさわしいメッセージが込められているようだ。
今回、白石らメンバーの卒業シングルとはいえ、ここにきてのコロナショックで握手会がどうなるか不明な状況。これまでのシングルの売り上げを支えてきた、個人の大量購入も影響があるとは思われるのだが、そこを楽曲の力でどこまでカバーできるかが見どころだ。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る)