父親の食事が子供の生活習慣病発症に影響するメカニズムを解明 理研など
2020年3月23日 09:01
理化学研究所(理研)は20日、父親の食事が子供の代謝に影響するメカニズムを解明したと発表した。子供が将来生活習慣病に疾患する要因が、父親の精子を経由して伝えられるという。
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■胎児プログラミング仮説とエピゲノム変化
体重が2,500グラム未満で産まれた低出生体重児は、大人になると糖尿病や高血圧等の生活習慣病を発症するリスクが高いことが疫学研究により判明している。このような報告をもとに、将来の生活習慣病発症リスクは、胎児期や産まれてすぐの環境の影響によって決定されるという「胎児プログラミング仮説」が提唱された。
最近の研究により、食物やストレス等によって後天的に遺伝子の発現を制御する情報(エピゲノム)が変化し遺伝することで、生活習慣病発症リスクに影響することが明らかになってきた。だがその機構に関しては謎が多かった。
■精子を通じて伝わるエピゲノム変化
理研の研究者などから構成される国際共同研究グループは、ショウジョウバエやマウスを使った実験から、ストレスなどの環境要因によってエピゲノムに変化を生じさせる転写因子を発見していた。転写因子は遺伝子の発現させるスイッチに相当するたんぱく質だ。研究グループは今回、父親マウスにたんぱく質の少ない食事を与えることで、子供のマウスに与える影響と転写因子との関連を調べた。
たんぱく質の少ない食事を与えた雄マウスと、栄養が適切に制限されたコントロール食で飼育した雌マウスを交配させ、子供マウスの肝臓での遺伝子発現を調べた。その結果、遺伝子の発現の上昇が一部で確認され、そのなかにコレステロール代謝に関連する遺伝子が多く含まれていることが判明した。
研究グループはたんぱく質の少ない食事と転写因子との関係をさらに調べたところ、父親マウスの体内で生殖細胞の変化が確認された。精子を通じて子供の遺伝子発現に変化が生じることが明らかになった。
本研究成果をもとに、子供が健康的に成長する栄養条件の解明や、関連するサプリメントの開発につながるだろうと研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、米科学誌Molecular Cellオンライン版にて20日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)