新型コロナウイルス検査を全自動化するシステム開発 東京農工大など

2020年3月16日 15:49

 新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)が世界各地で拡大し、重篤な健康被害を及ぼして経済的な影響が懸念されている。東京農工大学は13日、サンプルからPCR検査による判定までを全自動化するシステムの開発に成功したと発表した。

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■新型コロナウイルスを診断するPCR検査

 核酸増殖法の一種であるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査は、新型コロナウイルスの診断方法のひとつだ。患者の痰など、採取されたサンプルから抽出したDNAの断片を増幅させ、菌を検出する。

 新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの研究・開発が急ピッチで進められている。だがワクチンの開発には時間がかかり、治療が困難な状況だ。そのためウイルスの伝染や拡散を防止するためには、PCR検査による診断と接触を最小限に抑えることが不可欠であり、検査システムの確立が喫緊の課題である。

■ほかのウイルス検出にも応用可能

 東京農工大学はプレシジョン・システム・サイエンス(千葉県松戸市)と共同で、新型コロナウイルスの自動PCR検査システムを開発した。同システムは核酸の抽出や機能解析を完全自動化できる。プレシジョン・システム・サイエンスはすでに、熱帯や亜熱帯で発生しているデング熱やジカ熱、エボラ熱等にも対応できる汎用性の高いシステムとして製品化している。

 東京農工大学は千葉県衛生研究所とともに、採取されたサンプルを用いて全自動PCR装置「geneLEADシステム」の検証を実施し、システムの有効性を実証した。これにより、鼻咽頭拭い液や喀痰(かくたん)からPCRによる判定までの完全な自動化が可能になった。

 同システムの分析には2時間10分かかり、時間の短縮は限定的だという。だがウイルス検査まで完全自動化が実現しているため、検査者の負担を大幅に減らせる。またヒューマンエラーを減らすことで、解析結果の信頼性向上も期待できる。

 geneLEADシステムの装置は小型であるため、病院等に設置することで、ウイルス感染が疑われる患者への迅速な検査が可能になる。研究グループは今後、新型コロナウイルス検査に同システムの活用を検討し、実際の現場で活用できるよう準備を進める方針だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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