M87中心のブラックホールから噴出するジェット 加速する様子明らかに 国立天文台など

2020年3月9日 07:12

 多くの銀河の中心に存在する超大質量ブラックホール。そこから重力を振り切って噴出するジェットは、天文学者にとって謎の多い現象だ。台湾中央研究院天文及天文物理研究所と国立天文台水沢VLBI観測所の研究者らから構成されるグループは、楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホール近傍から噴出するジェット運動を調べ、加速する様子を明らかにした。

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■2019年に初めて撮影に成功したブラックホール

 おとめ座に位置するM87銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在する。世界中の電波望遠鏡を駆使したプロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」によって、史上初めて撮影に成功したブラックホールだ。

 研究グループは、撮像以前からこのブラックホールから噴出されるジェットを研究してきた。重力の大きなブラックホールでは物質や光を引きつける一方で、プラズマからなるガスがジェットとして外側に向かって噴出する現象が確認されている。ブラックホールの重力がもつ巨大なエネルギーが原因だと考えられているが、メカニズムについては謎が多いという。

■光速以上で噴出するジェット

 研究グループは2017年、複数の周波数帯の電波によってジェットが光速運動する様子を捉えることに成功している。今回、2016年から1年間のM87に関するデータも用い、ジェットの運動の解析を試みた。

 その結果、ジェットの根元から距離にして0.5ミリ秒角離れた場所では、みかけの速度が光の約0.3倍だったのに対し、20ミリ秒角離れると光の2.7倍のジェットが検出された。これはブラックホールから噴出するジェットが加速していることを示唆するという。

 研究グループはさらに、別の周波数帯の電波を用いて、ジェットの根元から離れた場所の運動をデータから分析した。その結果、最大で光の約5.8倍の運動が発見されたという。

 今回の研究では、データは2017年以前に収集されたものが用いられたが、ブラックホールが撮影された時期にもジェットの観測を実施しているという。今後は最新のデータを分析することで、ブラックホールとジェットとの関係への理解がさらに深まるだろうとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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