「在宅勤務はやりたくない」という理由
2020年2月17日 16:15
国内でも新型肺炎の二次感染、三次感染と思われる人が出始め、いよいよ蔓延し始めている様子があります。だからといって家に閉じこもるわけにもいかず、マスク、手洗い、人混みを避けるといった一般的な対策しかしようがありません。
ただ、人との接触を極力避けるという点から、このところ「在宅勤務」を推奨する企業が見られるようになってきました。大人数と直接接触せずに、それでも仕事が進められるということでは、感染症対策としては有効だと思います。
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今は日常的な仕事の中でも、一部の業務を出社せずにおこなったり、テレビ会議のような形で離れた場所同士で打ち合わせをおこなったりすることも増えてきました。
実際にやってみると、少なくとも私は不自由を感じることは一度もなく、快適に仕事が進められています。特に移動時間を大幅に短縮できるので、その点ではとても効率的です。
ただ、個人的に話を聞くと、これだけ環境が整った今でも、「在宅勤務」をはじめとしたリモートワークを、あまり前向きにとらえていない人がいます。必ずしもテクノロジーが苦手な人や古い考えの年長者というわけではなく、属性は千差万別です。
もう6~7年前になると思いますが、私はリモートワーク導入に関するセミナーをしたことがあります。そこで参加者に聞いたときは、約半数の人が「在宅勤務はあまりやりたくない」と言っていました。
そのほとんどが男性で、やりたくない理由を聞くと、多かったのは「家で仕事をしたくない」「家では仕事に集中できない」「仕事とプライベートのケジメがつけられない」など、自宅ほかのプライベートな場所には仕事を持ち込みたくないという気持ちの問題でした。
中には「平日の昼間まで家族と顔を突き合わせたくない」とか、「“会社に行く”という最も正当な外出理由を放棄したくない」といったものもありましたが、こちらも仕事の進め方とは直接関係がないことです。
最近お付き合いがある地方の会社では、職住接近で通勤の負担がないため、社員から「在宅勤務をやりたい」というニーズはほとんどありません。私が聞いた人は「家で仕事なんて・・・」「在宅勤務なんて冗談じゃない」と言っていました。
また、特に営業職やサービス系の業界の人に多かったですが、お互いにいつでも目が届き、何かあればすぐにフェイス・トゥ・フェイスで直接話せることが大事だと言い、「場」をともにすることが仕事上では都合が良いといいます。気持ちはわかりますが、これらはテクノロジーの活用で、十分に代替可能な話です。
「在宅勤務」をはじめとしたリモートワークは、これまで「生産性向上」や「働き手の利便性」といった面で語られることが多かったですが、今回の件では「事業継続」や「社員の健康維持」といった点でも重要なことが、より鮮明になりました。
「やりたくない」という理由のほとんどは、仕事とプライベートがあいまいになることを嫌う心理的なハードルです。そんな気持ちの問題を解決しながら、やはり積極的な導入を進めることが望ましいでしょう。
そうは言っても、「在宅勤務」が物理的に不可能な仕事もたくさんあります。工場の製造ライン、店舗運営にかかわる仕事、直接的な対人サービスなどでは、在宅でできる仕事はありません。
感染症対策としては、公共交通機関以外での通勤をさせるなど、考えられるものはありますが、人と接しなければ仕事自体が成り立たない業種もあり、在宅勤務などの制度やテクノロジーの導入で、すべての問題が解決できるわけではありません。
それでも、「在宅勤務」が事業継続のための有効な施策の一つであるのは間違いありません。社員の働きやすさという視点以外でも、導入を考えていく必要があります。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。