赤外線画像を天然色に変換するAIを開発 カラー化が可能に 産総研
2020年2月11日 17:39
産業技術総合研究所(産総研)は6日、赤外線画像をカラー化するAIを開発したと発表した。従来モノクロや近似的なカラー表示だった赤外線暗視画像が、可視光下でのカラーに表示可能となったことで、視認性が高まるという。
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■需要の高まるセキュリティカメラ
防犯意識が近年高くなり、防犯カメラや監視カメラ等のセキュリティカメラの需要が増加している。夜間時の撮影には赤外線が用いられるが、撮影された画像はモノクロあるいは近似的なカラーでしか表示されず、モニター監視者は対象物を明確に捉えにくいため、視認性の高い撮影技術の開発が課題だった。
光源からの光が対象に当たると、吸収される光と反射する光に分かれ、その後波長により反射率が変化して色へと反映される。可視光線の画像と、より波長の長い赤外線の画像とでは、単位面積当たりの明るさ(輝度)の情報が異なる。
そのため赤外線画像から天然色の画像へと変換する際に、輝度情報をそのまま使用できない。可視光線と赤外線の反射特性とのあいだに相関関係はあるものの、弱いため天然色の再現はこれまで実施されてこなかった。
■AIで輝度情報と色情報を学習
赤外線画像から天然色の画像へと変換するために産総研の研究グループが注目したのが、人工知能(AI)のひとつ、深層学習だ。言語や画像、音声など幅広い分野で応用されている深層学習は、計算機の高速化などにより実用化が可能となった。
研究グループは、輝度情報と色情報を同時に学習できるAIモデルを構築。AIモデルには、画像の特徴量を学習できる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と、動画等の時系列情報を学習できるリカレント型ニューラルネットワーク(RNN)が応用されているという。
従来の技術では、赤外線が透過しやすい紙や布等の薄い素材を天然色に変換するのが困難だったが、この手法により天然色の再現性が格段に向上できた。
今後、開発手法をさらに改善させることで、視認性の高いセキュリティカメラや、夜行性動物の生態記録などに応用できるだろうと研究グループは期待を寄せている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)