アルコール依存症治療薬ががんの抑制に効果 東京理科大などの研究
2020年2月3日 08:43
オプシーボに代表される免疫チェックポイント阻害薬は、がん治療において注目を浴びている。その一方で免疫細胞の一種であるマクロファージの多い患者は、これらの免疫療法の効果が出ないことが知られている。東京理科大学は1月30日、アルコール依存症の治療薬がマクロファージを調節し、がんを抑制できることを発見したと発表した。
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■免疫療法に立ちはだかるマクロファージ
がん細胞は、白血球の一種であるマクロファージやリンパ球などがもつからだの防御機能をかいくぐり、増殖する。免疫チェックポイント阻害薬を用いた免疫療法は、リンパ球を調節することで患者の余命を大幅に伸ばすことを可能にした。
だが、がん細胞のマクロファージは、免疫チェックポイント阻害薬の作用を打ち消す効果をもつ。そのため、マクロファージの多い患者では免疫療法の効果が出ないという。
■マクロファージを調節するアルコール依存症治療薬
東京理科大学、熊本大学、千葉県がんセンター研究所、東京大学創薬機構の研究者らから構成されるグループは、マクロファージの移動を制御する細胞内タンパク質を発見し、抗がん剤開発に向けた研究を続けてきた。
このタンパク質を欠損したマウスを観察し、マクロファージの数や活性化が減少していることが明らかになった。また肺がん治療を受けた患者でも、同タンパク質の発現の弱い患者のほうが、がんの再発が少ないことが判明した。
研究グループは発見したタンパク質を標的とした抗がん剤を見つけるために、13万種類の化合物に対し創薬スクリーニングを実施。その結果、アルコール依存症治療薬のジスルフィラムがマクロファージを調節し、がんを治療できることを発見した。ジスルフィラムは血中アセトアルデヒド濃度を上昇させ不快な反応を引き起こすことで、心理的に飲酒を断念する薬だという。
研究グループはすでに非臨床研究を完了し、現在は国立がん研究センター東病院で、ジスルフィラムと免疫チェックポイント阻害薬とを併用した臨床研究を続けている。
研究の詳細は、国際学術誌Nature Communicationsにて1月30日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)